善人ヲ装ウ、正直ナ悪党。
「何?? ワケ分かんねぇっつーの」
大貴が笑いながらワザとワタシの横髪を耳にかけ、顔を全開にしやがった。
「大貴の斜め後のテーブルに、課長と遥が座ってる」
大貴によって全開になった顔を、再度髪で覆いながら、大貴の上背で隠れる様に椅子を動かす。
「・・・・・まじか」
大貴が確認しようと身体の向きを変えようとした。
「振り向くなって!! バレる!! 顔そのままで黒目だけ動かして確認してよ」
「無理言うなっつーの。 オレ、ふくろうじゃねぇんだよ。 視野そんなに広くねぇっつーの」
「・・・・・・じゃあ、ちょっと待って。 ワタシが『今!!』って言ったら、一瞬だけ振り返って」
大貴に隠れながら、その時を待つ。
2人がメニューに視線を落とした。
「大貴、今!!」
ワタシの合図で大貴が一瞬だけ振り返った。
「・・・・・・・・まじなヤツやん」
大貴までもが、長くもない横髪で必死に顔を隠そうとし始めた。