善人ヲ装ウ、正直ナ悪党。
「・・・・・は??」
オレが言った事が信じられない様で、剛は少し半笑いになった。
「この前、藍とちょっと高めレストランに行ったらさ、いたんだよ。 遥と課長。 あの2人も、まさかあんな値の張るレストランにオレらがいるとは思わなかっただろうな」
「・・・・・・・・」
「藍、遥と課長にやめる様に言ったんだよ。 そしたらあんな風になっちゃったよね」
「・・・・・・・・ごめん。 全然信じられない」
半笑いのまま、でも目が全く笑っていない剛。
剛は、信じられないのか、信じたくないのか、遥にというよりは、オレに対して苛立っている様だった。
「うん。 でも、藍もオレもつまんない嘘は吐かないよ」
「・・・・・・・・ごめん。 オレ、帰るわ」
イライラを露にした剛が、お金を机に置き、鞄を持ち上げた。
「剛、課長を問い詰めたり抗議したりするのは、遥に確認して、剛がどうするかを決めてからにしろよ。 じゃないと、あんな目に遭った藍が報われない」
剛は、オレの言葉に一瞬立ち止まったが、オレと目を合わせる事なく店を出て行った。