善人ヲ装ウ、正直ナ悪党。
「藍、見てたからイイよ。 変な言い訳考えなくても」
オレのデスクに座っていた藍に近づくと、藍は少し驚きながらも『じゃあ、分かってくれるよね??』とでも言いたげな目でオレをみた。
鞄を持ち上げ、そんな藍に背を向ける。
「・・・・・・・大貴??」
「・・・・・・・藍、待ってて貰ったのにゴメンだけど、オレ、ひとりで帰るわ」
分かってる。
こんな事したら、ますます藍の気持ちは剛にぐらついてしまう。
でも、嫌だった。
剛のキスで
藍は真っ赤になって、女の顔をした。
そんな藍が、嫌だった。
「・・・・・・・・」
言葉を詰まらせた藍の方を見る事もなく事務所を出る。
藍が他の男とキスをしたのを見るだけで、嫌で仕方なかった。
自分の彼女が他の男とヤってる事を知った時、剛はこんなモンじゃなかっただろうな。
モヤモヤが収まらない。
剛はこのモヤモヤを藍にぶつけた。
オレはこのモヤモヤのせいで藍を遠ざける。
藍を好きなのは、オレの方なのに。
気持ちと行動が伴わない。