善人ヲ装ウ、正直ナ悪党。
会議室に入ると
「本田ぁ」
気持ち悪い笑顔を浮かべた課長が、ワタシとの距離を詰めてきた。
「オマエみたいな正論言ってるだけの中途半端な善人が、1番の悪党なんだよ」
課長が、ワケの分からない、漫画の決め台詞の様な事を言った。
………ばっかじゃねーの。
「何言ってるんですか?? 課長。 犬は犬。 猫は猫。 中途半端な善人は中途半端な善人です」
課長の決め台詞を軽く馬鹿にしてやると
「…………本っ当にムカつく女だな」
課長の腕が動くのが見えた。
-----ドスッ。
みぞおちに1発入った。
腹部を殴られたからって、ドラマみたいに気を失う事はなかった。
・・・・・・・・・が、息が出来ない。 吸えないし吐けない。
痛いとかよりも、苦しい。
何。 今日のケンカって殴り合いなの??
お腹を押さえて蹲るワタシの髪の毛を、課長がわし掴む。
そして、投げ捨てるようにワタシを放った。
ブチブチブチ。
髪の毛が、切れて。 抜けて。
「・・・・・・・・・・ッ」
呼吸が出来ないから、声が出ない。
----誰か、助けて。
大貴、助けて。