生と死の狭間で
「面白いお母さんだね!」

私は精一杯の笑顔を作って見せた。

「別に。普通の親よりうるさいからそう思うだけじゃねーの?」

しかし直哉の返事はやはり素っ気ない。
そりゃあお母さんと今日会ったばかりの私の態度が違うのはしょうがないけど、もう少し愛想良くしてくれても良いんじゃないのかなぁ。

「ええーそんなことないよー。スッゴクいいお母さんだよ!」

そう思うと無意識に少し声が大きくなった。



「ウチの親なんかよりお前の親の方がいいんじゃねーの?」



……。
私の…親…は、

「私の親はずっと外国に住んでるからほとんど会ったことがないの。」

それは、今まで誰にも言わなかった、いや言えなかったこと。


『病気で入院して、親にも見離された可哀想な子』


小さな時に言われた哀れみに満ちた声が蘇る。

昔唯一このことを話した親切で私の世話をよくしてくれたお姉さんの言葉。
ずっと本当のお母さんの様に慕っていたその人は、ただ私のことを哀れに思っていただけだった。


『何があっても愛してるよ』

その言葉をずっと握りしめる様に生きてきた私は絶望した。

でも…
直哉は、きっとそんなことないと思う。
何の根拠もないけど、そう思ったから直哉には素直に話した。
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