生と死の狭間で
直哉の瞳が大きく開かれた。


信じられないと、声には出さなくても嫌というほど伝わってくる。だって顏が、目が、表情が、心がそう私に訴えかけてくるから。



あぁ、やっぱり言わなきゃ良かった。

どうせ私は親にも運命哀れな子。普通とは違うから。



「……っは?」

間の抜けた様な直哉の声が静かな病室に響く。

それは、私にもう一度言えという意味だろう。
あんな悲しいこと、何度も言ってたら流石の私も泣きそうだ。だからあえて元気なふりをする。

いや。本当はここで泣いたら哀れな子だと自分で認めることになる。それが一番怖い。誰にも必要とされていない、その事実から逃げ惑う。だから無理に明るく振る舞う。

私は偽物の笑顔をまとう。
「だ・か・ら、私は親とほとんど会ったことがないからわかんないの。」
「…な、何で」
「えー、何でっていわれても仕事でしょ?」
「へー仕事か~ってなんでやねん!!」

まるでコンビ漫才。

…でも、直哉の瞳がさっきまでの瞳とは少し変わった気がする。ただなんとなく思っただけだけどそれだけで心が軽くなった。

この人には何を話してもいい、そう思える人に出会ったら聞いて欲しいことが山ほどあった。そして、それを話すと考えていたよりずっと楽になれた。
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