生と死の狭間で
その時オレは不思議な感覚を味わった。


それは正に


【生と死の狭間】



あの世とこの世の境目。


深い深い底のない透明な水に何処までも沈んで行くよう感覚。
オレはただ、どこまでどこまでも沈み続ける。



そんな中でオレは見たような気がした。



たぶん見間違いだろうと思う。
しかし意識は朦朧としていたはずなのに、そいつのことだけは、ハッキリと覚えている。



長く艶やかな黒髪
透き通るような瑞々しい白い肌
細く伸びる手足
まるで天女のような少女



その姿にオレは目を奪われた。



すると、不意にその少女と目があった。

くっきりした二重の瞳が真っ直ぐにオレを捉えて離さなかった。
いや、目を離すことが出来なかった。



そしてその少女は、オレを見るとニッコリと微笑んだ。


「────。」


??


何か言われたような気がした。


なんだ?なにをいっている?
しかし、聞き返そうとした瞬間にまた意識が飛び、聞き返すことは叶わなかった。
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