優しい幼なじみの君…【完】
君が好き。大好き
痛苦しい静かな玄関に、私の小さな声が響く。
「涼ちゃん…」
「ん?」
「今まで、ごめんね……。涼ちゃんの気持ちに気付かなくて……」
「謝らなくていいのに。優知が、鈍感だって事、小さい頃から知ってたから……」
「うっ…………」
「でも、俺、まだ優知に気持ち教えてもらってないな…。……教えてくれない?」
「…………え?!」
私は、靴をはこうとしていた時に、急に言われて。若干、バランスを崩しかける。
「…………俺の事、どう想ってるの?」
「ぁ、ぇ…と……。す、すすす…」
あ、あれ?元彼には、普通に言えていたのに………。何故か、涼ちゃんに言おうとすると、恥ずかしくて言えない……。
「す?」
「……す……てきだな!」
「…………………」
涼ちゃんは、ごまかした私に、怒ったのか。私を置いて、スタスタと玄関から出て行った。
私は、涼ちゃんを追いかける。遠くなる涼ちゃんの背中に向かって、私は叫ぶ。
「う、嘘!いや、嘘じゃないけど!す、好き!涼ちゃんが、好き!」
「…………ごめん。聞こえなかったから、もう一回聞かせてよ……!」
涼ちゃんは、ジッと私と視線を合わして、私に負けない位の声で叫ぶ。
「だ、だから!…涼ちゃんが大好き!」
涼ちゃんは、満足そうに、ニコッと今まで以上に見せた事のない…。かっこいい笑顔を私に見せた。
「…俺も、優知が大好き」
「涼ちゃーん!!」
私は、両手を広げて待っている彼の所まで、走っていく。
何年も、待たせてしまったけど……。
私は、…彼の胸に飛び込んで。…大好きという意味を沢山込めた笑顔を彼に向ける。
彼も…、私に笑顔を返してくれた。
優しい優しい笑顔を…。
私は、…彼の傍で…純粋な笑顔を…ずっと壊れないように守っていきたい思った…。