ラッキーセブン部
第十話 賭けの結果…
…二日目、放課後…
「昨日は…昨日だ。今日はきちんと勉強するからな…」
「じゃあ、今日は俺の家でやる?親もいるし…」
俺がため息交じりにそう言うと、栄はトランプを俺に投げながらそう言った。
俺は栄の家に行く気だが、佳介は乗り気ではないみたいだった。
「俺、行くだけで気が引けるんですけど…」
確かに、あの豪邸に行くのはちょっと、自分が情けなくなる気持ちになるのは分かる。
それとは、反対に笹井先輩は目を輝かしていた。
「坊ちゃんの家、豪邸でしょ?楽しみ〜」
やはり、女子というのはそういうお屋敷みたいなのに、憧れがあるのだろうか。
「おい。それより、隼一はどこだ?まさか、サボりなんじゃ…」
「近藤君は日直やったら、50%の確率で来るって言ってましたよ」
「…来ないな…」
「来ないね」
「栄!捕まえに行くぞ!」
「おうっ!」
俺達(笹井先輩以外)は隼一を探すために、部室を出た。
「佳介。隼一はどこにいると思う?」
「教室…ですかね。つい、さっきまでそこにいたので」
「ねぇ。一週間で俺らの頭って良くなると思う?」
「聞くな…それだけは」
とりあえず、俺達は一年教室に向かうことにした。一クラスずつ回ってみるが、隼一の姿は…なかった。
「本当に帰った…のか?」
「もしかしたら、入れ違いになってるかもしれないから、戻ってみようよ」
「正弥先輩。隼一はサボるような人じゃないと思います」
「お前らがそういうなら、戻るけど…」
何で、隼一は50%の確率で来るって言ったんだろうか…。何か、目的があったんじゃないか…?
「急ぐぞ。栄、佳介!」
「よしっ!」
「はいっ!」
俺達は階段を駆け降り、生徒会室横の部室に向かった。扉は…開いている。確か、行く時は閉めたはずだが…。
「正弥。早く中に入ろうよ」
「待て。栄。ちょっとだけ中を覗いてからにしよう…」
「えー。何で…」
俺達は静かに息を潜めながら中の様子を窺った。
「…こっからではよく見えないですけど、笹井先輩が誰かに勉強を教えているようですよ?」
「栄は見えるか?」
「見えなくても分かるよ。隼一でしょ?」
あいつ…笹井先輩と2人っきりで勉強するための策だったのか…。
「「はぁ…」」
「2人とも何でため息吐いてるの?もしかして、正弥達も…」
「栄。それ以上言うなよ…?」
「そうですよ。栄先輩。変な事言わないでください」
「ま、待て!2人で襲いかかられたら態勢が取れな…」
次の瞬間、栄はど派手に俺達の方へ倒れてきた。そして、俺達も態勢を崩し、積み木倒しのような形で佳介の上に俺、俺の上に栄が倒れた。
「あ、あんた達。どうしたの?大丈夫?」
その音に気付いて、笹井先輩はすぐに駆けつけてきた。こんな場面を笹井先輩に見られてしまうなんて…。
「いや〜。ちょっとね。競争してたら、転んじゃった」
栄は何事もなかったかのように、立ち上がり服の埃を払いながら、そう言った。こういう時の栄はなぜか尊敬してしまう。俺は心の中で感謝しながら、まだ呆けた顔をしている佳介を立たせた。
「先輩達が競争…?」
少し遅れて見にきた隼一は俺達の事を怪訝そうに見つめていた。そういえば、隼一は洞察力が優れているから下手な嘘をつくと、バレてしまう、確実に。しかし、隼一は俺達を見て口元を緩めるだけで何も言わずにまた、部室の中へと入っていった。今の表情は一体何なんだ。すると、部屋の奥から隼一の声が聞こえてきた。
「何をやってんだよ…。勉強するんだろ?」
一番言われたくないやつに言われた気がする…。俺達は顔を見合わせて苦笑いしながら、部室へと入った。
その次の日から、俺達は部室で勉強する事にした。一番、何の問題も起きずに勉強が出来るからという事で。そのため、俺達の監視役、吉田先生も何も言わずに監視してくれていた。
そして、テストが終わり、結果発表の日の放課後。部室には俺と吉田先生、2人っきりで部員を待つという状態に至っている…。
「お待たせ!正弥!さっき、佳介と隼一に会ったから、もうすぐ、ここに来ると思うよ」
「笹井先輩は?」
「…ここにいるわ」
笹井先輩は栄の後ろからヒョコっと顔を出して俺と吉田先生の顔を見比べた。
「2人っきりで…」
「笹井先輩。変な事を考えないでください」
「先輩〜遅くなってすみません」
「…どうも…」
その後に、続けて佳介と隼一が入ってきた。
これで、全員は揃った…。あとは…点数が揃えば良い。
「…じゃあ、3年から見てくか」
「はい」
笹井先輩は吉田先生に順位の紙を見せた。
「学年1位。今回も何の問題もないな。笹井は」
先生はそう言うと、俺の方に視線を向けた。俺はコクリと頷くと先生に紙を見せた。
「学年1位。ここの高校じゃなくて、もっと上の高校を何で選ばなかったのかが不思議だ…」
「…こっちにも色々と事情があるんですよ」
「先生!今度、俺!」
栄はそう言うと、強引に紙を吉田先生に渡した。
「…確か、この前は120位だったよな」
「先生。俺を舐めては駄目ですよ?」
「…80位⁉」
「この部活のためなら、俺は何でもするんです!」
栄は胸を張りながら、吉田先生にそう言った。俺も俺で色々と栄の事を心配してたんだけど、大丈夫だったみたいだな。
「じゃあ、次…」
「はい」
佳介も普通に紙を見せた。
「90位か…良いな。よしっ!最後、お前がおかしな順位じゃなければ、この部は学校に公認されて俺もお前らの顧問となる」
順位が良ければ…か。元々、これは隼一に賭けた賭けのようなものだ。ここで、結果は結果として受け止めないといけない…。生徒会の手伝いって何をやるんだろう…か。
「どうした。近藤」
「先生。俺はこの部活がどうなろうが関係ない」
「だから、見せないのか?」
「見せるよ…」
隼一は舌打ちをしながら、吉田先生に紙を渡した。
「……101位…か」
「後、一個で上なんだからまけてくれよ」
「駄目だ。賭けは賭けだ。生徒会の仕事を手伝ってもらう」
「せ、先生。一段階くらいオマケしてもらえませんか?」
今まで、黙っていた笹井先輩は吉田先生にすがるように問いかけた。
「でもな…」
それでも、吉田先生は簡単には、頷くことをしない。
バンっ!
そんな中、隣の生徒会と繋がる扉が開け放たれて、ツインテールの女子が部室に入ってきた。
「先生!七恵をいじめないでください!」
「いや…いじめてな…」
「ゲーム部とかそういう名目で学校に公認してもらえばいいじゃないですか!」
その女子がそうまくしたてると、先生は困ったように頭を掻いた。先生でも苦手な女子っているんだな…。
「…俺だって、そのつもりだった。しかし、賭けを破るのは…」
「じゃあ、俺達が公認されても、生徒会の仕事をすれば良いんですか?隼一じゃなくても、分かるくらいに焦ってますけど」
俺がそう言うと、吉田先生は珍しく情けない顔をした。
「…やってくれるのか?」
「許容範囲でなら私達は全力で、お手伝いしますよ。約束は約束ですから」
「じゃあ、よろしく頼む」
「「こちらこそ」」
こうして、俺達は生徒会の仕事の手伝いをする代わりに部活動として公認してもらえることになった。それは良かったのだが、笹井先輩の隣で犬のようにランランとした目で俺達を見てる、この女子は一体、誰だろう…。
「こいつらですか…。七恵の部活の男子は…」
「笹井先輩。そちらの方は誰ですか?」
「この子は…」
「あなたは、七恵と同中の佳介君ですね!礼儀正しい発言が売りと言う。私の名前は桜宮和香です」
「…はい」
「おーい!桜宮!仕事をサボるな!戻ってこい!」
「すみません!今、戻ります!じゃあ、七恵。また明日!」
桜宮…先輩は生徒会の人達に呼ばれるとすぐに隣の部屋に消えていった。残った俺達は少しの間だけあっけらかんとしていた。
「…えっと…何かごめんね」
「何がですか?むしろ、感謝ですよ。おかげで、学校に俺らの部活が公認されるんですよ?ラッキーですよ」
「そうだな。桜宮先輩には感謝しないと」
ゴホン
すると、一番呆気にとられていた吉田先生が大きく咳払いを一つした。
「で、急なお願いなんだが、今から仕事の準備をしてくれないか?」
「…仕事の準備?」
俺は先生の次の言葉をジッと待った。そして、先生はゆっくりと口を開けるとこう言った。
「文化祭でパフォーマンスして欲しいんだ」
「「はい⁈」」
「昨日は…昨日だ。今日はきちんと勉強するからな…」
「じゃあ、今日は俺の家でやる?親もいるし…」
俺がため息交じりにそう言うと、栄はトランプを俺に投げながらそう言った。
俺は栄の家に行く気だが、佳介は乗り気ではないみたいだった。
「俺、行くだけで気が引けるんですけど…」
確かに、あの豪邸に行くのはちょっと、自分が情けなくなる気持ちになるのは分かる。
それとは、反対に笹井先輩は目を輝かしていた。
「坊ちゃんの家、豪邸でしょ?楽しみ〜」
やはり、女子というのはそういうお屋敷みたいなのに、憧れがあるのだろうか。
「おい。それより、隼一はどこだ?まさか、サボりなんじゃ…」
「近藤君は日直やったら、50%の確率で来るって言ってましたよ」
「…来ないな…」
「来ないね」
「栄!捕まえに行くぞ!」
「おうっ!」
俺達(笹井先輩以外)は隼一を探すために、部室を出た。
「佳介。隼一はどこにいると思う?」
「教室…ですかね。つい、さっきまでそこにいたので」
「ねぇ。一週間で俺らの頭って良くなると思う?」
「聞くな…それだけは」
とりあえず、俺達は一年教室に向かうことにした。一クラスずつ回ってみるが、隼一の姿は…なかった。
「本当に帰った…のか?」
「もしかしたら、入れ違いになってるかもしれないから、戻ってみようよ」
「正弥先輩。隼一はサボるような人じゃないと思います」
「お前らがそういうなら、戻るけど…」
何で、隼一は50%の確率で来るって言ったんだろうか…。何か、目的があったんじゃないか…?
「急ぐぞ。栄、佳介!」
「よしっ!」
「はいっ!」
俺達は階段を駆け降り、生徒会室横の部室に向かった。扉は…開いている。確か、行く時は閉めたはずだが…。
「正弥。早く中に入ろうよ」
「待て。栄。ちょっとだけ中を覗いてからにしよう…」
「えー。何で…」
俺達は静かに息を潜めながら中の様子を窺った。
「…こっからではよく見えないですけど、笹井先輩が誰かに勉強を教えているようですよ?」
「栄は見えるか?」
「見えなくても分かるよ。隼一でしょ?」
あいつ…笹井先輩と2人っきりで勉強するための策だったのか…。
「「はぁ…」」
「2人とも何でため息吐いてるの?もしかして、正弥達も…」
「栄。それ以上言うなよ…?」
「そうですよ。栄先輩。変な事言わないでください」
「ま、待て!2人で襲いかかられたら態勢が取れな…」
次の瞬間、栄はど派手に俺達の方へ倒れてきた。そして、俺達も態勢を崩し、積み木倒しのような形で佳介の上に俺、俺の上に栄が倒れた。
「あ、あんた達。どうしたの?大丈夫?」
その音に気付いて、笹井先輩はすぐに駆けつけてきた。こんな場面を笹井先輩に見られてしまうなんて…。
「いや〜。ちょっとね。競争してたら、転んじゃった」
栄は何事もなかったかのように、立ち上がり服の埃を払いながら、そう言った。こういう時の栄はなぜか尊敬してしまう。俺は心の中で感謝しながら、まだ呆けた顔をしている佳介を立たせた。
「先輩達が競争…?」
少し遅れて見にきた隼一は俺達の事を怪訝そうに見つめていた。そういえば、隼一は洞察力が優れているから下手な嘘をつくと、バレてしまう、確実に。しかし、隼一は俺達を見て口元を緩めるだけで何も言わずにまた、部室の中へと入っていった。今の表情は一体何なんだ。すると、部屋の奥から隼一の声が聞こえてきた。
「何をやってんだよ…。勉強するんだろ?」
一番言われたくないやつに言われた気がする…。俺達は顔を見合わせて苦笑いしながら、部室へと入った。
その次の日から、俺達は部室で勉強する事にした。一番、何の問題も起きずに勉強が出来るからという事で。そのため、俺達の監視役、吉田先生も何も言わずに監視してくれていた。
そして、テストが終わり、結果発表の日の放課後。部室には俺と吉田先生、2人っきりで部員を待つという状態に至っている…。
「お待たせ!正弥!さっき、佳介と隼一に会ったから、もうすぐ、ここに来ると思うよ」
「笹井先輩は?」
「…ここにいるわ」
笹井先輩は栄の後ろからヒョコっと顔を出して俺と吉田先生の顔を見比べた。
「2人っきりで…」
「笹井先輩。変な事を考えないでください」
「先輩〜遅くなってすみません」
「…どうも…」
その後に、続けて佳介と隼一が入ってきた。
これで、全員は揃った…。あとは…点数が揃えば良い。
「…じゃあ、3年から見てくか」
「はい」
笹井先輩は吉田先生に順位の紙を見せた。
「学年1位。今回も何の問題もないな。笹井は」
先生はそう言うと、俺の方に視線を向けた。俺はコクリと頷くと先生に紙を見せた。
「学年1位。ここの高校じゃなくて、もっと上の高校を何で選ばなかったのかが不思議だ…」
「…こっちにも色々と事情があるんですよ」
「先生!今度、俺!」
栄はそう言うと、強引に紙を吉田先生に渡した。
「…確か、この前は120位だったよな」
「先生。俺を舐めては駄目ですよ?」
「…80位⁉」
「この部活のためなら、俺は何でもするんです!」
栄は胸を張りながら、吉田先生にそう言った。俺も俺で色々と栄の事を心配してたんだけど、大丈夫だったみたいだな。
「じゃあ、次…」
「はい」
佳介も普通に紙を見せた。
「90位か…良いな。よしっ!最後、お前がおかしな順位じゃなければ、この部は学校に公認されて俺もお前らの顧問となる」
順位が良ければ…か。元々、これは隼一に賭けた賭けのようなものだ。ここで、結果は結果として受け止めないといけない…。生徒会の手伝いって何をやるんだろう…か。
「どうした。近藤」
「先生。俺はこの部活がどうなろうが関係ない」
「だから、見せないのか?」
「見せるよ…」
隼一は舌打ちをしながら、吉田先生に紙を渡した。
「……101位…か」
「後、一個で上なんだからまけてくれよ」
「駄目だ。賭けは賭けだ。生徒会の仕事を手伝ってもらう」
「せ、先生。一段階くらいオマケしてもらえませんか?」
今まで、黙っていた笹井先輩は吉田先生にすがるように問いかけた。
「でもな…」
それでも、吉田先生は簡単には、頷くことをしない。
バンっ!
そんな中、隣の生徒会と繋がる扉が開け放たれて、ツインテールの女子が部室に入ってきた。
「先生!七恵をいじめないでください!」
「いや…いじめてな…」
「ゲーム部とかそういう名目で学校に公認してもらえばいいじゃないですか!」
その女子がそうまくしたてると、先生は困ったように頭を掻いた。先生でも苦手な女子っているんだな…。
「…俺だって、そのつもりだった。しかし、賭けを破るのは…」
「じゃあ、俺達が公認されても、生徒会の仕事をすれば良いんですか?隼一じゃなくても、分かるくらいに焦ってますけど」
俺がそう言うと、吉田先生は珍しく情けない顔をした。
「…やってくれるのか?」
「許容範囲でなら私達は全力で、お手伝いしますよ。約束は約束ですから」
「じゃあ、よろしく頼む」
「「こちらこそ」」
こうして、俺達は生徒会の仕事の手伝いをする代わりに部活動として公認してもらえることになった。それは良かったのだが、笹井先輩の隣で犬のようにランランとした目で俺達を見てる、この女子は一体、誰だろう…。
「こいつらですか…。七恵の部活の男子は…」
「笹井先輩。そちらの方は誰ですか?」
「この子は…」
「あなたは、七恵と同中の佳介君ですね!礼儀正しい発言が売りと言う。私の名前は桜宮和香です」
「…はい」
「おーい!桜宮!仕事をサボるな!戻ってこい!」
「すみません!今、戻ります!じゃあ、七恵。また明日!」
桜宮…先輩は生徒会の人達に呼ばれるとすぐに隣の部屋に消えていった。残った俺達は少しの間だけあっけらかんとしていた。
「…えっと…何かごめんね」
「何がですか?むしろ、感謝ですよ。おかげで、学校に俺らの部活が公認されるんですよ?ラッキーですよ」
「そうだな。桜宮先輩には感謝しないと」
ゴホン
すると、一番呆気にとられていた吉田先生が大きく咳払いを一つした。
「で、急なお願いなんだが、今から仕事の準備をしてくれないか?」
「…仕事の準備?」
俺は先生の次の言葉をジッと待った。そして、先生はゆっくりと口を開けるとこう言った。
「文化祭でパフォーマンスして欲しいんだ」
「「はい⁈」」