ラッキーセブン部
ー小学校、校門前ー

「…お、お兄ちゃん!?どうして、ここにいるの?」

校門で麻弥を待っていると麻弥は運動着姿で出てきた。この時期だともうすぐ運動会だからか…。
麻弥は俺達に気付くと驚いた顔をしながら走りよってきた。

「麻弥ちゃん、やっほー!」
「えっと…お兄ちゃんのお友達の…佐々木さん?」
「麻弥ちゃん、ひどいっ!俺、栄だよ!」
「あ…ごめんなさい」

栄の名前って覚えられにくいのか?確かに珍しい名前かもしれないが…。

「栄。麻弥に会ったのは良いけど、これからどうするんだ?」
「う〜ん…四つ葉のクローバー探ししようよ。ほら、麻弥ちゃん、このクローバー覚えてるでしょ?」

そう言って、栄は俺がさっき渡したしおりを麻弥に見せた。
麻弥はそれを見ると嬉しそうに笑った。

「お兄ちゃん、まだ持っててくれてたんだね。四つ葉のクローバー探ししたいっ!」
「ほら、正弥。麻弥ちゃん、こんなに嬉しそうだよ」
「そ、そうだな」
「あ、でも、その前に…これ調理実習で作ったの。食べて」

そう言うと、麻弥はカバンからパックを取り出してそれを俺達に見せた。
麻弥が調理実習で…作った?
俺は嫌な予感しかしなかった。

「へ〜。麻弥ちゃん、ホットケーキ作ったのか。じゃあ、いっただきまーす」

栄は元気良くホットケーキを口に入れた。そして、次の瞬間、難しい顔をした。

「どう?美味しい?」
「ん…。美味しい…よ。正弥も食べなよ」

麻弥には分からないかもしれないが、栄は顔から変な汗を流していた。だから、俺は危険を察知してそれを食べるのを拒んだ。

「知ってるだろ?俺が甘いの苦手なの」
「この卑怯者め!」
「なんでっ!?」
「そうだった…お兄ちゃん、甘いのダメなんだよね…」

麻弥はそう言うと、ホットケーキに何かをまぶして、俺に笑顔で渡そうとした。

「…何をかけたんだ?」
「え、唐辛子」
「そうか…。麻弥、よく聞いてくれ。唐辛子をかけても味は変わらないんだよ」
「そっか…」

麻弥はがっかりしたようにそう言ってからそのホットケーキをパックに入れてまたカバンに戻した。
なんとか、今日の夕飯は美味しく食べれそうだ。
しかし…麻弥はどうして唐辛子を常備しているんだろうか。

「ま〜さ〜や〜」
「ど、どうした!栄、顔が真っ青だぞ」
「もう…無理」

そういうと栄は地面に手をついて今にも吐きそうな様子を見せた。

「ちょ、ちょっと待ってろ。今、飲み物を買ってくるから。麻弥、栄のことを見ててくれるか?」
「うんっ!大丈夫ですか?さか…坂本さん?」
「大丈夫だけど…俺、栄だから…」

俺はまだ栄がツッコミを出来るほどの気力が残ってることを確認してから近くの自販機に走った。
えっと…普通の水だとあれだから殺菌作用のあるとされてるお茶でも買っとくか。
俺は三人分のお茶を買って、その場を去ろうとしたがその時ふと、あることを思い出した。
…そういえば、四つ葉のクローバーを見つけたのって、この辺りだったな。もしかしたら、あるかもしれない少しだけ探してみよう。
…俺が思った通り、数メートル先を歩いたところにクローバーがたくさん生えている場所があった。
…3…3…3…
ダメだ。三つ葉しかない。見落としているのかもしれない。もう一回見てみよう…。

「…おにぃ…お兄ちゃん…大変!」

俺がもう一度見ようとすると、麻弥が息を切らせながら走ってきた。

「栄さんが!」
「栄がどうしたんだ!」

まさか、死にそうとかじゃないよな?あの様子だとそれもありえなくなさそうだけど…。

「栄さんがたくさんの四つ葉のクローバーを見つけたの!」
「あぁ!?栄が?」

あいつ…俺より先に見つけたのか?
急いで俺は麻弥と一緒に栄のところに戻った。栄は相変わらず地面に手をついていたが、その目線は数メートル先の花壇を見つめていた。

「…ほら、あそこ…」

かすれ声でそう言うとゆっくりと立ち上がろうとする栄。

「分かったから、栄はこれ飲んでろ」

それを制して俺はお茶を栄に手渡してからその花壇に近づいた。確かに三つ葉のクローバーではなく四つ葉のクローバーがたくさん花壇に生えていた。…というか、あいつはこの距離からこれを見つけられたのか。

「ふ〜…。正弥、復帰したよ。お茶、ありがとう」
「栄は眼、良かったんだな」
「遠目はね。麻弥ちゃん、このクローバーでしおり7枚作れる?」
「はい!任せてください!7枚ですね」

栄がそう頼むと麻弥はニコッと笑って引き受けた。
7枚って事は部員分か。共通の物を持つのって協調感があって確かにいいな。

「じゃあ、出来たらお兄ちゃんの学校に持っていきますね」

しかし、この後、麻弥の学校訪問で問題が起こることはまだ誰も知らなかった。
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