ラッキーセブン部
第三話 親友だよ
「栄。おい、聞いてんのか?」
「…あ、ごめん。聞いてなかった。で、何の話?正弥」
「部活、入らないのか?」
「うん…どうだろう…」
部活に入らず帰宅部一本だったのだが、どうやらバスケ部にスカウトされ、入ろうか入らないかを決めかねているみたい…。
「そうか…。じゃあ、俺も入らないよ」
「何で?正弥、折角、スカウトされたのに…」
「…練習キツそうだし、先輩怖いし、それなら、栄とゲームしてた方が楽しいかなと思ってさ」
「そっか…」
俺がニコリと笑うと、正弥も嬉しそうに笑った。
今では、正弥は本当に俺の親友になった。学校が終わると、俺の家でゲームしたり、勉強したりたまに、進路の相談などもしている。
「荻野〜。ちょっと、話があるんだけど良いか?」
「え?あぁ、良いけど」
そんな事を考えていると、3•4人の男子達が荻野に話しかけていた。
「ここじゃあ、なんだから。あっちに行こうぜ」
「分かった。栄、ごめん。また、あとで話そう」
「りょーかい」
そして、男子達は正弥を連れて教室の外へ出て行った。しかし、俺はなぜか、嫌な予感しかしなかった。何だろう…この胸騒ぎ。
数分すると、正弥が戻ってきた。
しかし、その表情はどこか暗くて気安くは話しかけれなかった。
「栄。俺…部活に入る事にした。だから、これからはあんまり一緒に遊べない。ごめんな」
「良いよ。休日に遊べば良いだろ?」
「ごめん。休日も無理なんだ。練習があって…」
「そ、そうか。まぁ、頑張れよ」
「…ありがと」
正弥は部活に入るって言ってるけど、表情があまり嬉しくなさそうだ。これは…何かある。さっきの奴らと話してからこうなったよな。あいつらに事情を聞こう。
ガシッ!
俺が立ち上がりあいつらの所に、行こうとしたら正弥が俺の腕を
掴んだ。
「どうしたの?正弥?」
「いや…何でもない…」
「そう?でも、何で離さないの?」
正弥はゆっくりと手を離した。そして、俺にニコリと笑った。いつものように。
「…本当に何でもないよ。栄は、あいつらと関わらない方が良い。俺が何とかしないと…」
そう言うと、正弥は何かを決心したように俺の顔をジッと見てから、また、あいつらの所に行って、頭を下げながら何かを話していた。本当に何があったんだろう…。
その日の放課後、俺は委員会に行っている正弥を待つため、教室で今月までの貯金の計算をしていた。理事長の息子とはいっても、小遣いをたくさんもらえるわけでもなく、むしろ少ない方だ。一ヶ月に、500円って…どこの小学生だよ。いや、今の小学生の方が大量に貰っているかもしれない…。
「こんな所でなにしてんだ?理事長の息子さん?」
「うぁっ!」
いつからいたのか、昼間に正弥と話していた男子達がそこにいた。
「そんなに驚く事はないだろ?お化けじゃねぇんだから」
「そうだね。で…、なにしにきたの?ここに」
「遊びにきた」
「…遊び?」
そいつらは俺が咄嗟に貯金を隠すのを嫌な笑みで見下ろしてきた。気持ち悪い奴らだな…。
「俺達が思うに…お前と荻野は、釣り合ってないと思うんだよな」
「何を言ってんだよ!お前ら!」
「あれだろ?金あげてるから、荻野がお前みたいのと付き合ってんだろ?」
「な、なわけないだろ!」
「おっと…理事長の息子だから、といって人に手は出すなよな。万が一、先生がきたら面倒だろ?」
こいつら、何がしたいんだよ。正弥か、金か?名誉か?ただの口だけの虐めなら慣れてるし、俺はここからされば、良いだけの話だ。
けど、正弥も関わってくるかもしれないと思うと…ここを離れるわけにはいかない。
「…で、お前らは何が目的なんだよ」
「お前の考えた全部だろうな。多分」
「…金なら何とかしてやるよ。
ただ、正弥に関わるのはダメだ」
「話が早くて助かる。金はそうだな。一万円を4人分。つまり4万円を渡せ、しあさっての金曜日までにな」
「…分かった…」
男子達はそれだけ言うと、この場から去っていった。
金を渡せば良いんだ。それが終われば、普通の生活に戻れるけど…どうすればいい?いきなり、親に4万円くださいと言っても理由を聞かれる。そんな事したら、正弥と一生会えなくなるかもしれない。せっかくの初めての親友なのに…。それだけは避けないと…。
今、ある貯金額は……2万円。後、2万円をどうにかしないとなバイト…バイトで2万円…貯まるのか?一応、探してみるか…。
…道路修理…窓拭き…ウエイトレス…チラシ配り…カラオケ
この5つならいけるかな…学校終わりにすぐ行けば良いか。
「栄。バイト…すんの?」
「えっ!」
いつの間にか、俺の後ろには正弥が立っていて俺のスマホを覗き込んでいた。
「委員会、終わったんだけど」
「そ、そっか」
「何かあったのか?顔色悪いけど」
「な、何もないよ」
正弥は訝しんだがそれ以上は何も聞こうとはしてこなかった。正弥は昼間、あいつらに何を言われたんだろうか。俺と同じような事…言われたのかな?
「正弥…」
「ん?」
「…何でもない…」
「…用があるなら言えよ。ちゃんと聞いてやるから」
「じゃあ、良いバイト知ってる?」
「バイト?…そうだな。俺のおじの店で働く?」
「お、おじの店?」
「あぁ。柄に合わないスイーツ屋の店長やってるよ」
「そっか。そこで、働きたいな」
「OK。おじに言っとくよ」
こんな時に、正弥に頼る事になっちゃったな。…他にもバイト探そう。
次の日から俺の多忙な日々が始まった。
放課後、正弥に連れられておじの店に行き、販売等をし、その後、街でチラシ配りをし、カラオケのスタッフをやって最後は近所の店のウエイトレスをした。
家に帰る頃にはもう、クタクタだった。こんなんで後、2日大丈夫かな…。ちなみに、今日、貰った金額は4千円だった。明日は、4時間だし、他のバイトもやるか…
そんなこんなで約束の日になった。この前のように、正弥は、委員会へ俺は教室で待っていた。待つ事、数分…男子達がやって来た。
「久しぶりに話すな。笠森。約束金持ってきたか?」
「うん。一応」
「出せ」
俺が封筒を差し出すと、そいつは一万円を封筒から出して一人づつに渡した。
「……後、4万円出せ」
「えっ!それは無理だよ!いくら何でもそれはっ!」
「出せないって言うなら、まぁ、良いんだけどさ。君の大切な友達に苦労してもらうだけだから…」
「…っ!」
「あさってまでに持ってこい」
あと、4万円…無理に決まってる。今回のは、俺の貯金もあったから出せたわけで、3日間で普通に貯まるような金じゃない…。
「じゃあ、また、ここで会おう」
ザーザー……
「待てよ。お前ら」
男子達が帰ろうとした時、スピーカーから聞き覚えのある声が聞こえてきた。男子達も何事かと、足を止めてスピーカーを見ている。
「俺の名前は荻野 正弥。今、2年C組で起こっている事を成敗する!お前らのした事は全て録音と録画をしている。とりあえず、お前らが持ってる金を全額、栄に返せ。逃げるというのなら俺が力づくで取り返す」
「はっ!そっから、どうやって取り返すんだよ。おい、お前ら、さっさとここから出るぞ」
「無駄だって言ってんだろ?」
「っ!?」
そこにいる全員が一瞬にして固まった。なぜなら、放送室にいるはずの正弥が教室の入口になぜか立っていたからだ。
「金…返せって言ってんだろ?」
「フッ。貰った物を返すわけないだろ?そこ、どけ。手荒い真似はしたくないんだ」
「手荒い真似?やれるもんなら、してみろよ」
「金づるの為になんでそこまでしようとするのかが、わかんねぇな。まぁ、確かに君だけの金づるじゃなくなるのは嫌か…。笠森、一つ良い事を教えてやるよ。4日前の昼間、俺と荻野が何を話してたか気になってんだろ?教えてやるよ。こいつはな、お前の事、友達じゃないって言ったんだ」
「え…」
嘘だ。正弥がそんな事、言うはずがない。こいつら、嘘をついているんだ。きっと、そうだ。
「残念ながら、録音もしてある」
『俺は栄の友達じゃねぇ!』
「うそ…だ。うそって言ってよ!正弥!!こいつらが作った音声だって!」
正弥は困ったように頭の後ろを、掻いてから口を開いた。
「それは…うそじゃない。栄」
「…そんな…」
「うそじゃない!だから…俺は栄の友達じゃなくて、親友だ!!」
「へ?」
何だ。そういう事…か。
「正弥!!」
「あ〜あ。友情ごっこはそこらへんにしてくれよな。俺らは帰るんだよ」
「逃がさないって言ってんだろ…っ!」
正弥は向かってきた男子一人を背負い投げしてそのまま、ポケットにあった一万円を取り出して、俺に渡した。
「てめぇ!1万円返せ!」
「正弥っ!危ない!!」
いつのまに、カッターを取り出したのか、一人の男子が正弥に切りつけようとしていた。俺はとっさにそれを、教科書で受け止め、相手がビックリした隙をつき、後ろ足蹴りをくらわした。相手はすぐに地面にノックアウト。俺は即、一万円を回収した。それを見た残った二人の男子達は俺達にビビったのか、土下座モードに入っていた。
「栄。お前、そんな技使えたのか…」
「正弥こそ、凄いじゃん!」
正弥が使ったトリックの数々は、よく分からないけど、俺は最高の親友を持ってラッキーだな…。
「そういえば、よく分かったね。俺が脅されてるって…」
「あいつらが話してるのを聞いたんだ」
「途中で止めてくれれば、良かったのに…」
「お前、金貯めんの難しいって、言ってたから良い機会かな〜と思ってさ」
「ひど〜」
まさか、アルバイトさせるためにあいつらを野放しにしてたとは…正弥って、案外、腹黒い?…でも、助けてもらったのは確かだからいっか。
「あ〜そうだ。取り返したお金でゲーム買いに行こうよ。勿論、正弥が選んで良いよ」
「えー、栄が貯めた金なんだから自分で選べよ」
「正弥のおじさんの所で、貯めた分の金は正弥が使ってよ」
「…いや…じゃあ、買いに行くのだけ手伝ってやるよ」
「うん。分かった」
「でもさ…教科書も買っとけよ」
「あ…」
「…あ、ごめん。聞いてなかった。で、何の話?正弥」
「部活、入らないのか?」
「うん…どうだろう…」
部活に入らず帰宅部一本だったのだが、どうやらバスケ部にスカウトされ、入ろうか入らないかを決めかねているみたい…。
「そうか…。じゃあ、俺も入らないよ」
「何で?正弥、折角、スカウトされたのに…」
「…練習キツそうだし、先輩怖いし、それなら、栄とゲームしてた方が楽しいかなと思ってさ」
「そっか…」
俺がニコリと笑うと、正弥も嬉しそうに笑った。
今では、正弥は本当に俺の親友になった。学校が終わると、俺の家でゲームしたり、勉強したりたまに、進路の相談などもしている。
「荻野〜。ちょっと、話があるんだけど良いか?」
「え?あぁ、良いけど」
そんな事を考えていると、3•4人の男子達が荻野に話しかけていた。
「ここじゃあ、なんだから。あっちに行こうぜ」
「分かった。栄、ごめん。また、あとで話そう」
「りょーかい」
そして、男子達は正弥を連れて教室の外へ出て行った。しかし、俺はなぜか、嫌な予感しかしなかった。何だろう…この胸騒ぎ。
数分すると、正弥が戻ってきた。
しかし、その表情はどこか暗くて気安くは話しかけれなかった。
「栄。俺…部活に入る事にした。だから、これからはあんまり一緒に遊べない。ごめんな」
「良いよ。休日に遊べば良いだろ?」
「ごめん。休日も無理なんだ。練習があって…」
「そ、そうか。まぁ、頑張れよ」
「…ありがと」
正弥は部活に入るって言ってるけど、表情があまり嬉しくなさそうだ。これは…何かある。さっきの奴らと話してからこうなったよな。あいつらに事情を聞こう。
ガシッ!
俺が立ち上がりあいつらの所に、行こうとしたら正弥が俺の腕を
掴んだ。
「どうしたの?正弥?」
「いや…何でもない…」
「そう?でも、何で離さないの?」
正弥はゆっくりと手を離した。そして、俺にニコリと笑った。いつものように。
「…本当に何でもないよ。栄は、あいつらと関わらない方が良い。俺が何とかしないと…」
そう言うと、正弥は何かを決心したように俺の顔をジッと見てから、また、あいつらの所に行って、頭を下げながら何かを話していた。本当に何があったんだろう…。
その日の放課後、俺は委員会に行っている正弥を待つため、教室で今月までの貯金の計算をしていた。理事長の息子とはいっても、小遣いをたくさんもらえるわけでもなく、むしろ少ない方だ。一ヶ月に、500円って…どこの小学生だよ。いや、今の小学生の方が大量に貰っているかもしれない…。
「こんな所でなにしてんだ?理事長の息子さん?」
「うぁっ!」
いつからいたのか、昼間に正弥と話していた男子達がそこにいた。
「そんなに驚く事はないだろ?お化けじゃねぇんだから」
「そうだね。で…、なにしにきたの?ここに」
「遊びにきた」
「…遊び?」
そいつらは俺が咄嗟に貯金を隠すのを嫌な笑みで見下ろしてきた。気持ち悪い奴らだな…。
「俺達が思うに…お前と荻野は、釣り合ってないと思うんだよな」
「何を言ってんだよ!お前ら!」
「あれだろ?金あげてるから、荻野がお前みたいのと付き合ってんだろ?」
「な、なわけないだろ!」
「おっと…理事長の息子だから、といって人に手は出すなよな。万が一、先生がきたら面倒だろ?」
こいつら、何がしたいんだよ。正弥か、金か?名誉か?ただの口だけの虐めなら慣れてるし、俺はここからされば、良いだけの話だ。
けど、正弥も関わってくるかもしれないと思うと…ここを離れるわけにはいかない。
「…で、お前らは何が目的なんだよ」
「お前の考えた全部だろうな。多分」
「…金なら何とかしてやるよ。
ただ、正弥に関わるのはダメだ」
「話が早くて助かる。金はそうだな。一万円を4人分。つまり4万円を渡せ、しあさっての金曜日までにな」
「…分かった…」
男子達はそれだけ言うと、この場から去っていった。
金を渡せば良いんだ。それが終われば、普通の生活に戻れるけど…どうすればいい?いきなり、親に4万円くださいと言っても理由を聞かれる。そんな事したら、正弥と一生会えなくなるかもしれない。せっかくの初めての親友なのに…。それだけは避けないと…。
今、ある貯金額は……2万円。後、2万円をどうにかしないとなバイト…バイトで2万円…貯まるのか?一応、探してみるか…。
…道路修理…窓拭き…ウエイトレス…チラシ配り…カラオケ
この5つならいけるかな…学校終わりにすぐ行けば良いか。
「栄。バイト…すんの?」
「えっ!」
いつの間にか、俺の後ろには正弥が立っていて俺のスマホを覗き込んでいた。
「委員会、終わったんだけど」
「そ、そっか」
「何かあったのか?顔色悪いけど」
「な、何もないよ」
正弥は訝しんだがそれ以上は何も聞こうとはしてこなかった。正弥は昼間、あいつらに何を言われたんだろうか。俺と同じような事…言われたのかな?
「正弥…」
「ん?」
「…何でもない…」
「…用があるなら言えよ。ちゃんと聞いてやるから」
「じゃあ、良いバイト知ってる?」
「バイト?…そうだな。俺のおじの店で働く?」
「お、おじの店?」
「あぁ。柄に合わないスイーツ屋の店長やってるよ」
「そっか。そこで、働きたいな」
「OK。おじに言っとくよ」
こんな時に、正弥に頼る事になっちゃったな。…他にもバイト探そう。
次の日から俺の多忙な日々が始まった。
放課後、正弥に連れられておじの店に行き、販売等をし、その後、街でチラシ配りをし、カラオケのスタッフをやって最後は近所の店のウエイトレスをした。
家に帰る頃にはもう、クタクタだった。こんなんで後、2日大丈夫かな…。ちなみに、今日、貰った金額は4千円だった。明日は、4時間だし、他のバイトもやるか…
そんなこんなで約束の日になった。この前のように、正弥は、委員会へ俺は教室で待っていた。待つ事、数分…男子達がやって来た。
「久しぶりに話すな。笠森。約束金持ってきたか?」
「うん。一応」
「出せ」
俺が封筒を差し出すと、そいつは一万円を封筒から出して一人づつに渡した。
「……後、4万円出せ」
「えっ!それは無理だよ!いくら何でもそれはっ!」
「出せないって言うなら、まぁ、良いんだけどさ。君の大切な友達に苦労してもらうだけだから…」
「…っ!」
「あさってまでに持ってこい」
あと、4万円…無理に決まってる。今回のは、俺の貯金もあったから出せたわけで、3日間で普通に貯まるような金じゃない…。
「じゃあ、また、ここで会おう」
ザーザー……
「待てよ。お前ら」
男子達が帰ろうとした時、スピーカーから聞き覚えのある声が聞こえてきた。男子達も何事かと、足を止めてスピーカーを見ている。
「俺の名前は荻野 正弥。今、2年C組で起こっている事を成敗する!お前らのした事は全て録音と録画をしている。とりあえず、お前らが持ってる金を全額、栄に返せ。逃げるというのなら俺が力づくで取り返す」
「はっ!そっから、どうやって取り返すんだよ。おい、お前ら、さっさとここから出るぞ」
「無駄だって言ってんだろ?」
「っ!?」
そこにいる全員が一瞬にして固まった。なぜなら、放送室にいるはずの正弥が教室の入口になぜか立っていたからだ。
「金…返せって言ってんだろ?」
「フッ。貰った物を返すわけないだろ?そこ、どけ。手荒い真似はしたくないんだ」
「手荒い真似?やれるもんなら、してみろよ」
「金づるの為になんでそこまでしようとするのかが、わかんねぇな。まぁ、確かに君だけの金づるじゃなくなるのは嫌か…。笠森、一つ良い事を教えてやるよ。4日前の昼間、俺と荻野が何を話してたか気になってんだろ?教えてやるよ。こいつはな、お前の事、友達じゃないって言ったんだ」
「え…」
嘘だ。正弥がそんな事、言うはずがない。こいつら、嘘をついているんだ。きっと、そうだ。
「残念ながら、録音もしてある」
『俺は栄の友達じゃねぇ!』
「うそ…だ。うそって言ってよ!正弥!!こいつらが作った音声だって!」
正弥は困ったように頭の後ろを、掻いてから口を開いた。
「それは…うそじゃない。栄」
「…そんな…」
「うそじゃない!だから…俺は栄の友達じゃなくて、親友だ!!」
「へ?」
何だ。そういう事…か。
「正弥!!」
「あ〜あ。友情ごっこはそこらへんにしてくれよな。俺らは帰るんだよ」
「逃がさないって言ってんだろ…っ!」
正弥は向かってきた男子一人を背負い投げしてそのまま、ポケットにあった一万円を取り出して、俺に渡した。
「てめぇ!1万円返せ!」
「正弥っ!危ない!!」
いつのまに、カッターを取り出したのか、一人の男子が正弥に切りつけようとしていた。俺はとっさにそれを、教科書で受け止め、相手がビックリした隙をつき、後ろ足蹴りをくらわした。相手はすぐに地面にノックアウト。俺は即、一万円を回収した。それを見た残った二人の男子達は俺達にビビったのか、土下座モードに入っていた。
「栄。お前、そんな技使えたのか…」
「正弥こそ、凄いじゃん!」
正弥が使ったトリックの数々は、よく分からないけど、俺は最高の親友を持ってラッキーだな…。
「そういえば、よく分かったね。俺が脅されてるって…」
「あいつらが話してるのを聞いたんだ」
「途中で止めてくれれば、良かったのに…」
「お前、金貯めんの難しいって、言ってたから良い機会かな〜と思ってさ」
「ひど〜」
まさか、アルバイトさせるためにあいつらを野放しにしてたとは…正弥って、案外、腹黒い?…でも、助けてもらったのは確かだからいっか。
「あ〜そうだ。取り返したお金でゲーム買いに行こうよ。勿論、正弥が選んで良いよ」
「えー、栄が貯めた金なんだから自分で選べよ」
「正弥のおじさんの所で、貯めた分の金は正弥が使ってよ」
「…いや…じゃあ、買いに行くのだけ手伝ってやるよ」
「うん。分かった」
「でもさ…教科書も買っとけよ」
「あ…」