ラッキーセブン部
第五話 笹井先輩の昔話
私と正弥が出会った頃の話…
「先生。この学校で、成績一位って誰ですか?」
今まで、私が学校で成績一位だったはずなのに、噂では今年入ってきた一年が成績トップになっている事を聞いて、職員室に行った。
「君だと思うが…」
「学年じゃなく、全学年ですよ?」
「…吉田先生。荻野って何点だっけ?」
「900点中、895点だったはずですよ」
「じゃあ、荻野が一番か…」
荻野?895点って、5点しか点数落としてないってことじゃん。そんな人がこの学校にいるの?あり得ない…。
「正弥〜。何でまた、俺達、吉田先生に呼ばれたの?」
「知らないよ。また、栄のせいだろ…。失礼しま〜す」
「おー。荻野と笠森、やっと来たか」
その時、職員室に入ってきたのは、さっき話題に出てきた荻野という人だった。あの背の高い方が荻野…?それとも、坊ちゃんみたいなのが荻野?私的には、背の高い方が荻野だと思うんだけど…。
「ねぇ。あなたが荻野?」
私が思い切って、背の高い人に声をかけると、その子は面倒くさそうに頭を掻いてから口を開いた。
「…そうですけど。今は用事があるので、後にしてもらえませんか?」
な、な、何こいつ!ちょっと、冷たくない?人の目も見ないし…!
「で、先生。何の用ですか?」
「君達の部活についての話だ」
「部活?もしかして、顧問になってくれるのか?」
「大丈夫だ。ならないから。実質的に君達の部活は学校に認められていないし。だから、生徒会室横で活動するのはやめてくれないかという話だ」
「無理だな」
「無理だね」
二人は首を振りながら、吉田先生に反抗していた。吉田先生って、機嫌損ねるとちょっと面倒くさいのに、あいつらよくやるね…。
けど、私はあいつらと話をしたいから早目にして欲しい。あの、先生の弱点は女の子…。
「あの〜、先生。私もこの部に入りたいので、先生が顧問してくれませんか?」
「えっ!誰?正弥の彼女?」
「俺は知らない。それに、この部に女はいらない」
「えっ!野球とかそういう部類だった?」
「俺達はラッキーセブ…んが?!」
「とにかく、女子禁制だから…。先生、今日はゆっくり話せないみたいなので、また明日話しましょう」
そいつはそう言うと、職員室から出て行った。
…本当になんなの?荻野っていうのは、礼儀も知らないの?先輩として、礼儀ってもんを教えてやる!!
「失礼しました!」
私はそう言って、職員室を出た。さっきの二人は自動販売機の所でジュースを飲んでいた。
「ちょっと、あんた達!」
「おい…正弥。さっきの先輩らしき人が来たよ?本当に彼女じゃないの?俺、席外そうか?」
「あんな先輩。知らねぇよ。おい!どこ行くんだ!栄!」
「トイレ〜」
何かよく分からないけど、私はこんな礼儀知らずな男を彼氏に持ったことないわよ!
「…何の用ですか?さっきから…」
「話をする時は人の目を見て話してよ!」
「それだけ…ですか?」
「っ!」
それだけって…、この子…本当にいい度胸してる。
「あ、そういえば、俺達の部活に入りたいんでしたっけ?『7』の、数字が入っているなら女子でも良いですよ」
「別に部活に興味ないです!興味あるのはこの学校で成績1位の人です」
「俺…ですか?…そういうのは、ちょっと困るんですけど…」
「あんた嫌い!!」
「は?ちょっと、何なんですか」
私は気付いたら、走っていた。多分、あの場所にずっといられなかったからだろう…。知らない外国人と話してるイメージをしてもらえると、私が逃げた理由も分かると思う。
「わっ!ちょっ!」
「え?」
ドシンっ!
私が走ってるそこへちょうど、トイレから出てきた坊ちゃんにぶつかってしまった。
「痛〜〜」
私はすぐに立ち上がろうとしたけど、どうやら、転んだ拍子に足をくじいてしまったみたいだった。
「ご、ごめんなさい!せ、先輩。大丈夫ですか?」
ぶつかった坊ちゃんは心配そうに私に詫びをいれている。その声に気付いたのか、荻野は私達の所に駆けつけて来た。
「どうした?栄」
「俺が先輩を突き飛ばしちゃってそしたら、先輩、足をくじいたみたい…」
明らかに私の方からぶつかっていったのに、坊ちゃんは自分が悪いように言ってる…。
「…。栄、職員室にいた保健室の先生呼んできてくれ。俺は先輩を保健室まで運ぶから。先輩、俺の背中に乗ってください」
荻野はそう言って、私の前に背中を差し出した。どうしよう…。乗せてもらった方が良いのかな?
「何してるんですか。早くしてください。歩けないんでしょう?」
「わ、分かってる!」
私は促されるまま、荻野の背中に乗った。こんなの同級生に見られたら、恥ずかしいな…。
「先輩。名前は何ですか?」
「え?」
「名前ですよ。先輩は俺の名前、知ってるんでしょう?改めて言いますけど…俺の名前は荻野正弥です」
「わ、私の名前は笹井七恵…」
「『7』!?先輩、『7』持ってるじゃないですか!」
さっきとは明らかに違うテンションの声が聞こえる…。
「あ、着きましたよ。保健室」
「…ありがとう…」
だけど、保健室に着くとさっきの声にまた戻っていた。荻野は私をゆっくりと椅子に座らせて、私を見るなり、保健室から出て行った。ど、どうしたんだろう。…放課後に保健室に一人って案外、寂しいんだけど…。
ガラガラッ
「先生。早く!ってあれ?…正弥は?」
「えっと…今さっき出て行っちゃった」
「えー、あいつ、どこ行ったんだよ。先輩を置いていくなんて…。ちょっと、俺、探しに行ってきますね」
坊ちゃんはそう言って、保健室から走って出て行った。
「元気ね。さすが、一年生。あなたをここまで運んだのはもしかして…荻野君かしら?」
「はい」
「点数が悪くてあんなにイライラしてたのに、ここまで運んでくるなんて本当に優しい子なのね…」
「え?先生、今、なんて言いました?」
「優しい子ね…って」
「その前です」
「点数が悪くてイライラしてたって事?」
「点数…悪いって…いつも、満点ってことなんですか?」
「えぇ。綺麗に満点…ね」
…ライバル意識というより、もう尊敬に値するよ。荻野…。
「足は軽い捻挫みたいね。あ、そういえば、さっき湿布切れちゃったんだわ。ちょっと、待ってて。持ってくるから」
先生はスリッパをパタパタとしながら、保健室から出て行った。また、一人になっちゃったな…。
ガラガラ
数分すると、荻野と坊ちゃんが、静かにドアを開けて中に入ってきた。
「あれ?先生は?」
「緊急会議が開かれちゃったみたいです。一応、湿布は先輩に渡しときますね。あと、これは正弥から…。じゃあ、俺らは帰るんで」
「あ、ありがと…」
私がお礼を言うと、坊ちゃんは私に湿布とヘアピンを渡して帰っていった。
…?ヘア…ピン?
私は髪の毛を触ると、朝からつけていたはずのヘアピンがなかった。坊ちゃんとぶつかった時に、落とした…?荻野はそれに気づいて探しにいってくれたんだ…。何か…案外…良い奴?
次の日、私はお礼をしにラッキーセブン部の活動場所、生徒会室横の部室に行ってみた。けど、部員は荻野と坊ちゃんしかいなかった。
「これ…だけなの?部員」
「えぇ。今の所は。やっぱり、入るんですか?この部に」
「は、入らないわよ!ただ、お礼を言いにきただけ…だから」
「あぁ。それは先輩が栄にぶつかった時にヘアピンを無くしたって言わせないためですから」
「っ!」
前言撤回…。やっぱり、こいつ優しくない…。
「っていう、昔話」
「正弥先輩…なんか性格違ったんですね。でも、笹井先輩、正弥先輩と付き合ってるんですよね?」
「付き合ってないわよ」
「え。話が違う…」
「いや、話が違うというか、佳介の勘違いだろ。栄が変な事、言ったせいでもあるけどよ。って…こんな事をしてるうちにそろそろ解散の時間になったな。今日のラッキーな事ってなんだった?」
「先輩達の話を聞いた事ですね」
「俺は吉田先生が退却した事!」
「私は昔話、出来た事かな」
「俺は…この部活が初めて説教されずに終わった事…だな」
「先生。この学校で、成績一位って誰ですか?」
今まで、私が学校で成績一位だったはずなのに、噂では今年入ってきた一年が成績トップになっている事を聞いて、職員室に行った。
「君だと思うが…」
「学年じゃなく、全学年ですよ?」
「…吉田先生。荻野って何点だっけ?」
「900点中、895点だったはずですよ」
「じゃあ、荻野が一番か…」
荻野?895点って、5点しか点数落としてないってことじゃん。そんな人がこの学校にいるの?あり得ない…。
「正弥〜。何でまた、俺達、吉田先生に呼ばれたの?」
「知らないよ。また、栄のせいだろ…。失礼しま〜す」
「おー。荻野と笠森、やっと来たか」
その時、職員室に入ってきたのは、さっき話題に出てきた荻野という人だった。あの背の高い方が荻野…?それとも、坊ちゃんみたいなのが荻野?私的には、背の高い方が荻野だと思うんだけど…。
「ねぇ。あなたが荻野?」
私が思い切って、背の高い人に声をかけると、その子は面倒くさそうに頭を掻いてから口を開いた。
「…そうですけど。今は用事があるので、後にしてもらえませんか?」
な、な、何こいつ!ちょっと、冷たくない?人の目も見ないし…!
「で、先生。何の用ですか?」
「君達の部活についての話だ」
「部活?もしかして、顧問になってくれるのか?」
「大丈夫だ。ならないから。実質的に君達の部活は学校に認められていないし。だから、生徒会室横で活動するのはやめてくれないかという話だ」
「無理だな」
「無理だね」
二人は首を振りながら、吉田先生に反抗していた。吉田先生って、機嫌損ねるとちょっと面倒くさいのに、あいつらよくやるね…。
けど、私はあいつらと話をしたいから早目にして欲しい。あの、先生の弱点は女の子…。
「あの〜、先生。私もこの部に入りたいので、先生が顧問してくれませんか?」
「えっ!誰?正弥の彼女?」
「俺は知らない。それに、この部に女はいらない」
「えっ!野球とかそういう部類だった?」
「俺達はラッキーセブ…んが?!」
「とにかく、女子禁制だから…。先生、今日はゆっくり話せないみたいなので、また明日話しましょう」
そいつはそう言うと、職員室から出て行った。
…本当になんなの?荻野っていうのは、礼儀も知らないの?先輩として、礼儀ってもんを教えてやる!!
「失礼しました!」
私はそう言って、職員室を出た。さっきの二人は自動販売機の所でジュースを飲んでいた。
「ちょっと、あんた達!」
「おい…正弥。さっきの先輩らしき人が来たよ?本当に彼女じゃないの?俺、席外そうか?」
「あんな先輩。知らねぇよ。おい!どこ行くんだ!栄!」
「トイレ〜」
何かよく分からないけど、私はこんな礼儀知らずな男を彼氏に持ったことないわよ!
「…何の用ですか?さっきから…」
「話をする時は人の目を見て話してよ!」
「それだけ…ですか?」
「っ!」
それだけって…、この子…本当にいい度胸してる。
「あ、そういえば、俺達の部活に入りたいんでしたっけ?『7』の、数字が入っているなら女子でも良いですよ」
「別に部活に興味ないです!興味あるのはこの学校で成績1位の人です」
「俺…ですか?…そういうのは、ちょっと困るんですけど…」
「あんた嫌い!!」
「は?ちょっと、何なんですか」
私は気付いたら、走っていた。多分、あの場所にずっといられなかったからだろう…。知らない外国人と話してるイメージをしてもらえると、私が逃げた理由も分かると思う。
「わっ!ちょっ!」
「え?」
ドシンっ!
私が走ってるそこへちょうど、トイレから出てきた坊ちゃんにぶつかってしまった。
「痛〜〜」
私はすぐに立ち上がろうとしたけど、どうやら、転んだ拍子に足をくじいてしまったみたいだった。
「ご、ごめんなさい!せ、先輩。大丈夫ですか?」
ぶつかった坊ちゃんは心配そうに私に詫びをいれている。その声に気付いたのか、荻野は私達の所に駆けつけて来た。
「どうした?栄」
「俺が先輩を突き飛ばしちゃってそしたら、先輩、足をくじいたみたい…」
明らかに私の方からぶつかっていったのに、坊ちゃんは自分が悪いように言ってる…。
「…。栄、職員室にいた保健室の先生呼んできてくれ。俺は先輩を保健室まで運ぶから。先輩、俺の背中に乗ってください」
荻野はそう言って、私の前に背中を差し出した。どうしよう…。乗せてもらった方が良いのかな?
「何してるんですか。早くしてください。歩けないんでしょう?」
「わ、分かってる!」
私は促されるまま、荻野の背中に乗った。こんなの同級生に見られたら、恥ずかしいな…。
「先輩。名前は何ですか?」
「え?」
「名前ですよ。先輩は俺の名前、知ってるんでしょう?改めて言いますけど…俺の名前は荻野正弥です」
「わ、私の名前は笹井七恵…」
「『7』!?先輩、『7』持ってるじゃないですか!」
さっきとは明らかに違うテンションの声が聞こえる…。
「あ、着きましたよ。保健室」
「…ありがとう…」
だけど、保健室に着くとさっきの声にまた戻っていた。荻野は私をゆっくりと椅子に座らせて、私を見るなり、保健室から出て行った。ど、どうしたんだろう。…放課後に保健室に一人って案外、寂しいんだけど…。
ガラガラッ
「先生。早く!ってあれ?…正弥は?」
「えっと…今さっき出て行っちゃった」
「えー、あいつ、どこ行ったんだよ。先輩を置いていくなんて…。ちょっと、俺、探しに行ってきますね」
坊ちゃんはそう言って、保健室から走って出て行った。
「元気ね。さすが、一年生。あなたをここまで運んだのはもしかして…荻野君かしら?」
「はい」
「点数が悪くてあんなにイライラしてたのに、ここまで運んでくるなんて本当に優しい子なのね…」
「え?先生、今、なんて言いました?」
「優しい子ね…って」
「その前です」
「点数が悪くてイライラしてたって事?」
「点数…悪いって…いつも、満点ってことなんですか?」
「えぇ。綺麗に満点…ね」
…ライバル意識というより、もう尊敬に値するよ。荻野…。
「足は軽い捻挫みたいね。あ、そういえば、さっき湿布切れちゃったんだわ。ちょっと、待ってて。持ってくるから」
先生はスリッパをパタパタとしながら、保健室から出て行った。また、一人になっちゃったな…。
ガラガラ
数分すると、荻野と坊ちゃんが、静かにドアを開けて中に入ってきた。
「あれ?先生は?」
「緊急会議が開かれちゃったみたいです。一応、湿布は先輩に渡しときますね。あと、これは正弥から…。じゃあ、俺らは帰るんで」
「あ、ありがと…」
私がお礼を言うと、坊ちゃんは私に湿布とヘアピンを渡して帰っていった。
…?ヘア…ピン?
私は髪の毛を触ると、朝からつけていたはずのヘアピンがなかった。坊ちゃんとぶつかった時に、落とした…?荻野はそれに気づいて探しにいってくれたんだ…。何か…案外…良い奴?
次の日、私はお礼をしにラッキーセブン部の活動場所、生徒会室横の部室に行ってみた。けど、部員は荻野と坊ちゃんしかいなかった。
「これ…だけなの?部員」
「えぇ。今の所は。やっぱり、入るんですか?この部に」
「は、入らないわよ!ただ、お礼を言いにきただけ…だから」
「あぁ。それは先輩が栄にぶつかった時にヘアピンを無くしたって言わせないためですから」
「っ!」
前言撤回…。やっぱり、こいつ優しくない…。
「っていう、昔話」
「正弥先輩…なんか性格違ったんですね。でも、笹井先輩、正弥先輩と付き合ってるんですよね?」
「付き合ってないわよ」
「え。話が違う…」
「いや、話が違うというか、佳介の勘違いだろ。栄が変な事、言ったせいでもあるけどよ。って…こんな事をしてるうちにそろそろ解散の時間になったな。今日のラッキーな事ってなんだった?」
「先輩達の話を聞いた事ですね」
「俺は吉田先生が退却した事!」
「私は昔話、出来た事かな」
「俺は…この部活が初めて説教されずに終わった事…だな」