ラッキーセブン部
第七話 四人目?
正弥は掃除だから、一人で部室に行かないとな。あれ?部室のドアが空いてる。先生が使ってるのかな?俺がゆっくりと中を見ると、紙が散乱している中に一人、大きく息をついている不良っぽい男子がいた。これは…どういう状況?

「えっと…、探し物ですか?」

俺がそう声をかけると、不良っぽい男子はこちらを驚いた顔で振り向いた。そして、無言で俺の横を走り去って行ってしまった。
一体、彼はここで何をしてたんだろう…。散乱している紙は、ラッキーセブン部の宣伝紙だった…。

「栄先輩、何ですか、この紙の残骸は…」
「栄。誰がやったんだ?」

俺は落ちている紙を拾おうとすると、正弥と佳介が入り口に立っていた。

「ちょっと、探し物を…」
「探し物…ですか」
「随分、大胆な事を」

正弥と佳介は苦笑いしながら俺と一緒に紙を広い集めてくれた。

「ん?なんだこれ」

紙を全部、拾い集めると誰かの生徒手帳が落ちていた。それを、拾った正弥は俺に持ち主の写真を、見せた。こいつは…さっきの…。不良っぽさは無いが、その写真は間違いなくさっきの不良っぽい男子だ。名前は近藤隼一(じゅんいち)か。

「犯人はこいつ…みたいだな。一年か」
「正弥先輩、この人『7』を持ってますよ」
「本当だ!住所に『7』がたくさんある!正弥、どうする?」
「どうするも何も…今日は野外活動だ」

というわけで俺達は、その男子の家に行く事になった。学校からはそんなに遠くなく歩いて10分ぐらいで着いた。このマンションの7階に住んでるみたいだけど…ここ、すごく古そう。何かが出そうみたいな。

「着いたけど、誰がインターホンを押すんだ?」
「そこは正弥でしょ」
「そうだな…」

ピーンポーン

反応がない…。まだ、家に帰ってないのかな。不良っぽかったし、そこらへんをうろついているかもしれない。

「いないか…。もしかしたら、学校で生徒手帳探してるかもしれないな…」
「そうですね。もう一回、学校に戻りますか」
「…誰だ。お前ら」
「「「っ!」」」

俺らが帰ろうとすると、エレベーターからさっきの男子が出てきた。正弥達は生徒手帳の写真と違う外見の男子に驚いているみたいだった。

「…おい。あいつ、ヤンキーだろ」
「やっぱり、ヤンキーだよね?」
「…先輩。ここは帰りましょう。危ないです」
「おいっ!何、コソコソ話してんだよ!」
「あっ!正弥にさわっちゃ…」
「え?」

バタン

キレた男子は正弥の肩に手をかけたが、次の瞬間、正弥に背負い投げをされてしまっていた。
もうちょっと、早目に言っといてあげた方が良かったかな?正弥は不良とかに触られると背負い投げしちゃうって…。

「すまん…つい…」
「ってめ〜!」
「っ!」

投げられた男子は今度は殴りかかっていったが、正弥はスイっと横に避けた。

「ちょっと、話し聞けって!背負い投げしたのは謝るから」

正弥がそう言うと、男子は怪訝な顔をしながら動きを止め俺らの顔を見た。

「何だよ」
「君の生徒手帳を届けに来たんだ。俺達の部室を荒らした時に落としてったやつ」

それを聞いた途端、男子はもっと怪訝な顔で俺達を見た。

「…じゃあ、お前らがラッキーセブン部とかいう部活のやつら?」
「そうだよ」
「…帰れ」
「え?」
「早く帰れっ!」

何故か、俺らの部の名前を聞くと怒りだしてしまった。

「先輩、帰りましょ。これ以上はちょっと…」
「…また、来るからな。お前はこの部に必要だから…」

正弥はそう言うと、俺らの背中を押し、エレベーターに乗った。ドアが閉まるまで男子は俺らの事をずっと睨んでいた。けど、俺には哀しい目をしている様な気がした。

「先輩。また、行くってどういう事ですか?」
「ヤンキーでも、『7』を持ってる事には変わりないから必要だろ?それに、どうせ、あいつは入る所無いだろうし」
「生徒手帳も返してないしね」

俺達は一旦、学校に戻る事にした。

「さてと…。四人目がもうすぐ、決まるかもしれないんだけど…。あいつ、どうすれば心を開くと思う?」
「ねぇ。四人目って私じゃないの?」
「「笹井先輩!」」

俺らが部室で話し合っていると、笹井先輩がいつものようにいきなり入ってきた。何で、みんな、そんなに存在感を消せるんだろう…。

「四人目って…笹井先輩、入ってないでしょ」
「入ってないって…。ここにいるだけで部員だと思うんだけど…。それに一番、最初に誘われたのは私だし…」

笹井先輩は当然というようにそう言った。確かに…笹井先輩って…四人目なのかも。

「…」
「どうしたの?正弥」
「どうしたんですか?正弥先輩」
「…笹井先輩はその…まぁ、入っても良いんじゃないですか。花があった方が男子の7が集まってくるかもしれないし…」

正弥はそう言いながらいつものように鞄からトランプを取り出し、ポーカーの準備をし始めた。

「そういえば、何であんた達、いつもポーカーしてるの?」

笹井先輩は正弥の発言を気にする事なく、正弥のトランプカードに釘付けになっていた。

「一定の記号と13枚のカード。しかも、13の真ん中は7だからですかね。純粋に楽しいから、やってるんです」
「…私、七並べぐらいなら出来るんだけど…」
「正弥。七並べしようよ!ね?」
「栄がそういうなら構わないけど…。まぁ、後悔はしないようにしてくださいね。ジョーカーどうします?」
「いらないわ」

正弥はそう言うと、トランプから素早く7を四枚取り出し、机の上に並べた。
そして、皆に手札が回されて試合が始まった。

そして、数分後。

「あんた達、どういう脳してんの?」

笹井先輩は今にも正弥のトランプを引きちぎりそうな勢いで俺らに食いかかってきていた。
順番の結果がどうなったかというと…。正弥、1位。俺、2位。佳介、3位。笹井先輩、4位だった。

「毎日やってる俺達に勝てるわけないじゃないですか」
「…私、七並べとババ抜きと神経衰弱しかできないのに…」

笹井先輩が悲しそうな顔をすると正弥が何故か動揺し始めた。そして、少し考えるポーズをすると、口を開いた。

「じゃあ、俺が教えてあげますよ。ポーカーのやり方。そうすれば、皆でできるでしょう?」
「…うん。分かった」

笹井先輩はうなずくと、正弥の隣に座った。

「じゃあ、まず、ポーカーの基本ルールを教えます。各自配られた五枚の札を基に役を作り、その役の強さを競うものです」
「う、うん」
「実際にやった方が分かりやすいですね…」

正弥はそう言うと、笹井先輩にトランプを渡そうとすると2人の手が触れ合い、お互いが何故か顔を赤くした。

「…俺、飲み物買ってくるね」
「あ、先輩!俺も行きます!」

俺と佳介はその空間から逃げ出すように部室から出た。

「先輩!待ってくださいよ〜」
「佳介も耐えられなかったのか」
「無理ですね。あの二人ってどんな関係なんですか?本当に」

佳介も真っ赤な顔をしながら、俺の後についてきた。
あの二人がどんな関係なのか…、なんていうのはよく分からないけど。正弥は先輩の事…。

「ん?どうしたんだ。佳介」
「俺ってダメな男だなと思って…」
「え?」
「俺、彼女いるんですけど…笹井先輩の事、好きみたいなんです。正弥先輩と笹井先輩があんな感じだと俺…嫉妬しちゃって…」

嫉妬って…。笹井先輩、モテるんだ〜。確かに人並み以上の可愛さは持ってるよな。しかし…佳介に彼女がいるってのも驚きなんだが…。なんてコメントすれば良いかな。

「まぁ、良いんじゃん?笹井先輩の事を好きでも…嫌いになるなんて無理なんだろ?」
「は、はい。…栄先輩は好きな人いないんですか?」

え?俺…の?好きな人…?
やばいな、考えてみたこともなかった。俺の周りって、あんまり女子いないし…。

「いない…かな。気になる人ならいるかもしれないけど、それは、好意じゃないし…」
「そうなんですか…」
「そんな事より、どうやって戻る?」
「数分待っていくのが良いと思います」

そういうわけで、俺らは数分待ってから部室に行くことにした。
しかし、戻ると笹井先輩と正弥が向かいあってポーカーをしているのだが…正弥は何故かうなだれていた。

「正弥?」
「笹井先輩…札運強すぎ…」

盤面を見ると笹井先輩の圧勝のようだった。

「意外と簡単ね」

笹井先輩には元々の潜在能力が、あったというのかな。でも、正弥より強いなんて…。

「笹井先輩、俺も混ぜらせてくださいよ〜」
「もちろん、良いよ」

それから、また数分の事…

「やっぱり、何で勝てないのよ!あんた達、グルなんじゃない?」

笹井先輩はまた怒り狂っていた…。

「やっぱり、熟練の差…かと…」

順位は1位と2位が変わっただけだった。札運が強いっていうのは、まぐれだったのかな。先輩はそのまま部室から出ていってしまって今日帰ってくる気配はなかった。

「正弥。本当に笹井先輩、部員で良いの?」
「別に、良いんじゃないか?俺はどっちでも…良いし」

正弥はまた、顔を赤くしながら、そう言った。佳介はというと、少しだけ哀しそうな顔をしていた。
大丈夫かな…この部。折角、あの子のお姉さんの為に7名を集めようというのに、こんなんで…。

「何だよ、栄。そんな顔で俺を見るな」
「ちゃんとしてよ?正弥」
「は?」

一応、念のために言っておこう。
すると、正弥は何かに気が付いたような顔をしていた。

「そういえば、あいつは5人目になるって事か…」
「あ、忘れてました。確か、近藤隼一君でしたよね。どうするんですか?」
「明日の昼休みにでも、探しに行こうか…」
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