SOAR!
自分の心臓の音で、自分の声が聞こえなかった。
どうしても自分から伝えたかった気持ち。小谷さんは口をパクパクして真っ赤な金魚みたいだった。かわいい…!
「…う、そ」
「ホント。…最初は他の女子と違ってキャーキャー言ってこないのに、練習試合とか見に来てて気になって」
見つめられて更に頬が熱くなる。
「放課後の自主練の時に、渡り廊下で見かけて、そん時の笑顔が忘れられなかった」
「それ…きっと、御山くんを見てたからだよ」
恥ずかしそうに、それでも笑ってくれた彼女の笑顔は、いつか見た渡り廊下での綺麗な笑顔だった。それが自分にだけ向けられていると思うと胸がきゅっ、となった。
「俺と付き合ってくださいっ!」
「はいっ」
嬉しくて、ギュッと抱き締めて、すっぽり包みこんでしまえる華奢な身体が愛しくて、涙が溢れてきた。
正直、断られる可能性だって考えていた。バスケ以外に夢中になったのは初めてで不安だった。ましてや恋なんて。
間に挟まれて苦しそうな本には悪いけど、もう少しこのまま抱き締めていたい…。
そう願った。
「ダンク決まった時みたいに最高の気分だ!」
その言葉は、正真正銘、心の底から湧き出した気持ちで、二人揃って泣き笑いした。