SOAR!
「キャプテーンっ、動き悪いぞ!」
「っあー!悪ぃ!少し休憩!」
寝不足のせいかどうにも動きが鈍い。昨日の小谷さんを思い出すと、やはり無理はしないに限る。運良く今日の部活は午前中だけだし。
それからまた少し汗を流して、反省会をして解散する。
「御山ぁ、今日遊ばねぇ?」
「ごめん、予定入ってる」
友人からの誘いを断る理由はただ一つ、小谷さんとの約束があるからだ。
そういやこいつ、園田さんが好きだって言ってたな…。何だか申し訳ない気分になった、いろいろと。
キャプテンだから、最後に戸締まりをしていくのはいつものこと。体育館は他の部活も使っているから、部室だけ確認。よし、忘れ物もなし。
鍵を返して、一人下駄箱へ。
他人よりも少し重たいローファーを下に置く。
「…御山くん、」
遠慮がちにかけられた声にバッと顔を上げれば。
「小谷さんっ!」
愛しい彼女が照れながら微笑んでいた。
「え、私服?」
「うん…、昨日、千華たちに、つ…付き合ってるのバレたら大変なことになるって言われたから、ちょっと気づかれにくくしようと思って…」
成る程、それで眼鏡なんだ。…可愛いなぁ。
「でも私服で良く校内入れたね」
「ね、私もビックリ。正門から堂々と入ったんだよ?」
「マジかっ!誰とも会わなかった?」
「うん、さすがにちょっとトイレとかに隠れたけど」
クスクスと笑い合う。
俺はバレても構わないと思ってるけど、園田さんと彼女の彼氏さんにいろいろ言われたし、もし小谷さんを傷付ける結果になったら嫌だし、早く学校から離れよう。
「チャリ取ってきたらさ、俺んち寄って良い?俺も着替えるから」
「うんっ」
小谷さんと人目を気にしながら駐輪場に向かう。
サイドを三編みにして、眼鏡をかけて。シンプルなワンピースは制服のスカートよりも丈が短くて……、ってあれ?小谷さんうつ向いちゃった。
「…あ、あんまり見ないで…ほしいんだけど…」
服、変だったかなっ?と慌てる彼女に、俺も慌ててそれを否定する。
「ごめっ、変じゃないってかむしろ可愛くて…っ!」
あ、つい本音が。うわ、俺今スゲー顔熱い。
でも目の前の彼女は耳も首も真っ赤で、もっと熱そうだった。
小谷さんはすぐに真っ赤になる。それがまた可愛くて、もっとその表情を見たいと思った。