SOAR!
2学期になって、また部活に忙しくなって、その頃には黒髪の彼女のことは忘れていたような気がする。
いつものように自主練を始めると、渡り廊下の方から話し声が聞こえて何とはなしに、そちらを見た。
(あ、黒髪の子だ)
久しぶりに見た彼女の姿に、今まで忘れていたはずなのに釘付けになった。
彼女と向き合うように男子が一人、何話して、しゃがんだ。そして彼女もしゃがむ。そうすると、渡り廊下につけられた低い壁に隠され姿が見えなくなってしまう。
立ち上がった二人は笑顔で別れた。何か見てはいけないものを見た気がして目を逸らす。でも気になって横目でちらりと彼女を見ると、俺を見て微笑んでいた。それは優しいようで、儚いようで。
すぐに走り去ってしまった彼女を、今度はしっかりと見つめた。
(……スゲー、綺麗な笑顔だったなぁ…)
思い出すと胸が高鳴って、放ったシュートはことごとく外れた。
後で聞いた話によると、彼女は図書委員で本を返して貰っていただけらしい。