SOAR!
新しいクラスメートと挨拶を交わした4月。
ラッキーなことに俺の席は一番後ろだった。そして斜め前には黒髪の彼女がいた。
やっと名前を知ることが出来た。小谷千代さん、黒髪ロングに似合うちょっと古風な名前。そして小柄。
喜んだのも束の間、彼女とは何の接点もないのだと思い知らされたのもこの頃だった。
(図書室行ってる時間もねぇし、行って何借りるんだよ…)
このときほど、本をほとんど読まない自分を恨んだことはなかった。
「御山ーっ」
休み時間、となりのクラスの友人が俺の周りの女の子をひっぺがすように近づいてくる。有り難かった。
「お前あの子と同じクラスじゃないかよ羨ましい!」
「…本気で気になってたんだな」
友人は去年の秋から、園田さんと言う子が気になっているらしい。そして園田さんは、小谷さんの友人。
「なぁ、あの子お前のファンだと思うんだ。だから声かけてくんねぇかなぁ」
「な、ふざけんな自分でかけろよ!」
俺は、本気で好きなら他人に頼らず、自分で頑張るべきだと友人に言った。
これは本心だった。ただ内心、俺だって誰かにきっかけを作ってほしいよ!って思ってたさ。