SOAR!

メアドを交換した翌日、小谷さんの体調は悪そうだった。
声をかけたかったけれど、今驚かせるのは良くないかなって思った。彼女は、俺が声をかけると毎回驚いているから。

お弁当のときも園田さんに心配されているようだったが、周りの賑やかさが邪魔して会話は聞こえてこなかった。



その日の体育は、雨が降ったから男女とも体育館だった。
バスケをしながら、小谷さんが見学している姿が見えた。

「うおっ!…女子の方からボール飛んできた!」

「俺、返してくるっ」

こちらに走ってくる小谷さんに笑顔で呼びかける。その時、視界の端に、彼女の方へ飛んでいくバスケットボールが見えた。

ドッ…!

気がついた時には、右肩に衝撃、痛み。顔が歪んだ。小谷さんと俺の距離はほとんどなかったと思う。

園田さんが心配して駆けつけてくれた。
保健室へ行こうと、園田さんと俺と、小谷さんは歩き始めたはずだった。

園田さんの悲鳴。
グラリと小谷さんの体が揺れて、倒れ込んだ様子に、俺の頭は真っ白になって、それからのことは覚えていない。



後に、園田さんに教えて貰った。
物凄いスピードで小谷さんを姫抱きして保健室へ走っていった、らしい。
…必死過ぎるだろ、俺。

友人はそれを男前だと言って誉めてくれた。…いや、からかってくれやがった。


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