SOAR!
念のために部活は休めと言われたが、たいしたことなくてホッとした。
けれども、小谷さんはなかなか目を覚まさなくて、クマが痛々しかった。
ようやく起きた時は心底安堵した。
申し訳なさそうに謝ってうつむく表情、長い睫毛が可愛くて、思わず本音が自然と声になった。
「体が勝手に動くんだ。守んなきゃって…小谷さん、だからかな」
「え、」
驚いてこっちを向いた彼女の頬はうっすら赤くて、可愛くて、二人きりだったから、気持ちを伝えようと意を決して口を開く。声が震えた。
のに。
小谷さんの荷物を持って来てくれた園田さんが現れて、結局言えなかった。
保健室を出て、三人で下駄箱に向かう。小谷さんがふらつかないか心配だった。
そして、園田さんはずっと気を使ってくれて、靴も離れて置いてくれた。
保健室でのことを気にしてくれているのかと感じた。
まだ雨は止まない。困っていると、園田さんが彼氏さんに送らせるからと言ってくれた。そしてトイレに行ってしまった。
また気を使ってくれたのだろう。
二人きりになった。
心臓がうるさく動いた。
「…あ。…御山くん、これ」
差し出されたのは、あの本だった。
「千華の彼氏が私にくれるって言うから、はい」
「え、借りて良いの?」
「ううん、あげる。…本当は読みたかった訳じゃなくて…」
真っ赤になってうつ向いてしまった小谷さんの耳も真っ赤で、震える声に期待してしまう。
「…ただ、御山くんがバスケしてるから、御山くんがっ、…す、んっ」
ドンッ、と下駄箱に小谷さんを押しつける。驚いて大きな目をまんまるくしている彼女の唇に触れ、すぐに離す。柔らかい感触だった。
「好きだ。小谷さんが、すきだ」