愛し*愛しの旦那サマ。


だけどね、私も二十六歳。イイ大人。

ここは大人の対応で。

そう思って、


「同じ事務所の方なんですね~。いつも、主人がお世話になっております~」


と、“主人”を強調して、秘書藤枝から臣くんに放たれる視線の間に割り込んでやった。


「いえいえ、私がいつも櫻井先生にお世話になってるんですよ~」

「まぁ、そうなんですね~」

「櫻井先生、とても仕事が出来る方なので、私もとっても仕事がやりやすいです~」

「ソウナンデスネ~」


何だか、もの凄~くひっかかるモノがあるけど、ここは愛想笑いよ、幸代。

と、そんなやりとりを秘書藤枝としていると、


「じゃあ、帰るんで」


と、臣くんはさっさと出入り口の方向へ歩き出す。


明らかに好意を見せる事務所の秘書にもそっけない態度。

ふふ。さすが冷酷男臣くん。グッジョブ!


「それでは、失礼します~」


私もニッコリと笑顔を浮かべて、その場を去ろうとした。

すると―…


「フンッ……」


ア。

イマ、ナニカキコエタヨ。



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