愛し*愛しの旦那サマ。


「おい……」


臣くんの声に、思わず肩がびくっとなる。


「だ、大丈夫!例え、藤枝さんを部屋まで送ったとしても、部屋の中まで入ったなんて思ってないからっ……!」

「は?お前、何勘……」

「違う、違うっ!何も勘違いしてないっ!」

「人の話を聞け……」

「大丈夫っ!マンションから出てくるのが遅い理由は気になっていても聞いてないからっ!」


もうっ。

自分で自分が何を言っているのか、何が言いたいのか、わからなくなってきた。


やばい。

どんどん支離滅裂な言葉ばかりが思考の中でと口から出てきて……軽く、いや、かなりパニック状態……


「だから落ち着けって」


臣くんの冷静な言葉に、


「……」


やっと、私の口からは言葉がおさまる。


そ、そうだよね。

確かに、これは落ち着くべきだ。


そう、思ったところで、


ブォォ~、


と、一台のタクシーが向こうから走ってきた。

そのタクシーは私と臣くんからほんの少し離れた場所で止まって、中年のサラリーマン風の男性を降ろした。


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