愛し*愛しの旦那サマ。
目の前に空車のタクシーが一台。
そうか。
神様、そういうことですか……
心の中で、この状況が示すのはどういう事かを瞬時に勝手に察して、
「……ちょっと、散歩代わりにタクシーにでも乗って心を落ち着かせてきます」
「はぁ?」
「ちょっと、今の幸代を臣くんにお見せすることは出来かねますので……」
「何言って……」
そう言って、臣くんは私の腕を掴んでくれたのに、
「ご……」
“ごめんなさい”
それだけ言うと、私は大好きな臣くんの手を振り払って、タクシーへと乗り込んだ―…
「と、とりあえず、出してもらってもいいですか?」
私の言葉で、タクシーは発車した。