愛し*愛しの旦那サマ。
ただ、あの夜。
タクシーの中で交わされた、
『―…意味、わかりますよね?別に割り切った関係でも構わないんです。私、他言したりは―…』
『藤枝さん、俺を他の男と重ねたって虚しいだけですよ』
『……どういう意味ですか?』
『言葉にしたままですよ』
『……ご存知、なんですね』
『心配していた人がいたので』
臣くんとFの会話。
『……叔父には昔からお世話になりっぱなしなんです』
『そうですか』
『婚約までしてて、あっさりふられちゃうなんて情けない女なんです、私。実は櫻井先生の奥様、元彼が選んだ女性と似てるんです。だから、色々と突っかかっちゃいました』
『―…藤枝さん、』
そんな臣くんとFの会話は、
『はい』
『そんな事情、俺にはどうでもいいんですよ』
『……冷たいんですね』
『そういう男ですよ、俺は。だから、こんな男と一緒になってくれた大事な妻に今後ちょっかい出したら容赦しませんよ』
『……わかりました』
私は結局、知らないままで―…
『櫻井先生、奥様のこと、ちゃんと愛されてるんですね』
『当たり前です。かなり惚れてますよ』