愛し*愛しの旦那サマ。

背後では何やら彼女が、ごそごそと動いている様子。

少しして物音が止むと、


「りちゃこ~、お布団きもちいいねぇ~よく眠れそうですよぉ~…」


気の抜けるような彼女の声が耳に入ってくる。

思わず振り返り、彼女に視線を向けると―…

案の定、しっかりと寝具を纏い、再びベッドで横になる彼女の姿が目に入る。

しかも、さっきの間にワンピースからバスローブに着替えたようで、


「りちゃこ~、このバスローブも肌触りがいいんだけどぉ~」


口元を緩ませて、バスローブの裾を頬に擦り寄せ始める。

ただ、彼女の瞼は閉じた状態。

これから本格的に寝入られたら困る……そう思って、


「おい、起きろ」


そう声をかけるも、


「りちゃ……理沙子~、今日は誘ってくれてありがとねぇ~」


俺の言葉は無視状態。

しかも、理沙子という女と勘違いまでしている始末。

酔いが抜けていないのか寝惚けているのかどうかは知らないが―…


タチが悪すぎ。



< 422 / 498 >

この作品をシェア

pagetop