愛し*愛しの旦那サマ。
もう、これ以上の面倒に巻き込まれないように、さっさと一人でホテルを出ようか、という考えも頭に過ぎったが、さすがにさっきまで泥酔状態だった彼女を残して出るわけにも行かず―…
「おい、」
再び、声を掛けるも、
「あのねぇ~、お酒の力ってすごいねぇ~何だか元気が出てきたぁ~…」
すっかり自分の世界に入ってしまっているようで、目を閉じたまま、独り言が続行される。
今まで飲み会に参加して酔っ払った人間は何人か見てきたが、ああいう飲み会の席でここまで仕出かすヤツは初めて見る……
しかも女で。
こういう女もいるんだな、と、呆れながら彼女を見ていると、
「まぁ~、お酒の力も素晴らしいんだけどぉ、やっぱり恋のパワーは偉大だねぇ~ムフフ~…」
「……」
口元を更に緩ませて薄気味悪い笑みを浮かべる。
もう声を掛けるのもバカらしくなった為、とりあえず三十分だけこのまま寝かせよう、と決める。
それでも起きないようであれば、その時は無理矢理にでも起こしてさっさとここを出よう。
そう思って、腕時計で現在時刻を確認した時だった。