愛し*愛しの旦那サマ。
今度こそはしっかりと目が覚めたんだろう。
しかし、三十分程度寝た位でだいぶまともな状態に戻るものなんだな……
そんなことを思いつつも、やっと正気に戻った様子の彼女に、
「言っとくけど、違うから」
何よりも先にそう言葉を掛ける。
すると、
「え?」
という、間抜けな声が返ってくる。
彼女が今、どんな事を考えているかなんて誰にでも簡単に想像がつく。
こんな状況に巻き込まれた挙句、勝手に想像を膨らまされて面倒な問いをされるのは勘弁だ。
「確かに、ここはそーゆー場所だけど、あんたが今想像したような事は一切ないから」
そう伝えると、彼女は安堵の表情を浮かべる。が、また直ぐに困惑の表情に変わり、
「あ、あの、どういう……」
おそるおそる俺に説明を求めてくる。
そんな彼女に、
「隣の漫画喫茶であんたの友達が待ってるから、友達に聞いて」
冷たくそう返した後、
「服はそこにあるから、さっさと着替えて友達に連絡したほうがいいよ」
彼女が脱ぎ散らかして眠ってしまった後に、仕方なくハンガーに掛けてやったワンピースとコートを指差し、立ち上がる。