愛し*愛しの旦那サマ。


「抱いてもいい?」


頬にそっと手をおいて尋ねると、


「ふふっ……」


彼女の口元が微かに緩む。

そして、


「何だか、あの日の夜を思い出すね」


そんな言葉と一緒に、柔らかな笑みを見せる幸代。


「あの日?」

「ほら、初めて私の作ったボンゴレ食べたでしょ?」

「ああ、」

「同じ言葉、臣くんに言われたなぁ、って」

「ふーん……」


それから、そんな会話の後、彼女は俺の頬に両手で触れると、


「お願いします」


そう、にっこりと笑って、俺の口唇に軽いキスをおとした。


“可愛い”


そんな言葉が何度も浮かぶ。

その度に、言葉の代わりに何度も何度も彼女にキスを贈る。


あの日、以上のキスを。



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