【完】児玉くん色に染められそう。
「今日、観にくるでしょ」
その沈黙を破ったのは
児玉くんのほうだった。
ほとんど強制な言葉に
たじろぎながらも頷く。
でもあたしどんな
気持ちで見ればいいの?
そんなこと考えていると
児玉くんはまた余裕無さ気に言う。
「俺今日絶対、勝つから。
三宅のこと越すから。
――だから、見てて」
そう言って無理するように
少しだけ口角を上げた。
ああ、まただ。
胸がきゅーっと
締め付けられるこの感じ。
苦しいのに切ない。
「…、」
「……そのすぐ顔を赤らめる癖やめて。余計な勘違いしそうになるから」
「っ、ご、ごめんっ」
まるで熱が伝染したみたいに
児玉くんの頬もほんのり紅くなる。
「おーい、児玉。昨日言ってたジャンプもってきたぞー」
「うん、今行く。じゃあね、森さん」
どんどん遠ざかって行く児玉くんの背中。
やだな…
児玉くん色に染められそう。