【完】児玉くん色に染められそう。








試合はもう始まっているのだろうか。

帰りのSHRの時間から二学年の話題の中心になっていたから、きっと体育館はギャラリーで一杯なんだろうな。



そんなことに思いを巡らせながら

あたしは――空き教室で居残りをしていた。


(こんなはずじゃなかったのに…)



「先生…駄目ですか」


「駄目だ」


「どうしてもですか…」


「どうしてもだ」



さっきからペンを動かしつつ

このやり取りが何回も行われていた。


担任は椅子の上で足を組みながらメガネを光らす。

あたしはその隙のない視線に半ば諦めつつあった。



「…」


「不貞腐れてないではよ書け。
お前だけだぞ、期限内に出してないの」



どうしてよりによってこんな大事な日に。

自業自得と分かっていながら

心ここにあらずの状態なあたしに
担任は呆れたように溜息を吐く。



「先生こういうのはどうでしょう…。
15分だけ席を外しているうちに先生が代わりに問題を解き15分経ったら交換してあたしが解くっていう…」


「なんで共同作業になってんだ。
お前の宿題だろ。お前がやれ」



ダメか。

ガックリ、肩を落とす。



でも、昼休みに児玉くんに観に行くって言っちゃったし。

なにより、あたしは“行かなきゃいけない”側だと思う。





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