【完】児玉くん色に染められそう。
「児玉くん!!」
「―――っ」
あたしの声は、すぐに周りの歓声にかき消された。
でも、名前を呼んだ瞬間
児玉くんと一瞬だけ目が合ったのだ。
心臓が、爆発するかと思った。
体育館が熱気で一体化する。
ギャラリーの声は
最高潮に達する間近だった。
そんな中あたしは
呼吸をするだけで精一杯。
胸がとても熱い。
試合は二点差で僅に
三宅たちが勝っていた。
ボールが児玉くんの手に吸い付く。
そしてシュッとゴールに
向かって綺麗な弧を描いた。
わああっと歓声が一際高まる。
「…っ」
三宅は苦渋な顔で
パン、と太ももを叩く。
あんなに必死な三宅を見るのは初めてでその姿に胸は更に締め付けられた。
ディフェンスの構えの児玉くんに対しダンダン、とドリブルを打つ三宅。
三宅はうちの中学が強かっただけあって
軽々とディフェンスを抜いて、あっという間に点を入れた。
あたしは二人を目で追いながらも、結衣がいる場所へと人ごみを掻き分け押し進む。
本当に人が多くて酔いそうだ。
「あ、薫! 良かった、もう少しで終わっちゃうところだったんだよ」
「ご、ごめん。
でも間に合って良かった」