【完】児玉くん色に染められそう。
「すごいよ…児玉くん。
前半結構点差あったのにいつの間にか追いついてる」
結衣の興奮混じりの言葉に
あたしは、とりあえず頷いてみせた。
五分五分な試合だけあって周りの歓声は体育館内一杯に詰まっている。
瞬きすら惜しいほどに
あたしは二人を一心に見つめた。
だけど、試合もいよいよ残り1分。
1点差で三宅たちがリードしていた。
「ゆ、結衣これって児玉くんたちが最低あと2回シュート決めなきゃいけないってこと?」
中学時代バスケ部だった結衣に訊くと彼女は視線を前に向けたまま口を開いた。
「や、そうしなくても2ポイントライン外側から打てばいける、と思う」
「…ふ、ふあん」
「まあ、なるようになるって」
呑気な声の結衣に気をとられ、見るということを一瞬忘れてしまった。
残り三十秒と、カウントが始まり肩が跳ね上がる。
児玉くんにへと視線を向けると
彼の表情はまだ諦めてはいなかった。
でも、一発勝負なんて
プレッシャー強すぎるよ。
オロオロと視線をあっちこっちに動かしてると児玉くんチームの一人がディフェンスの隙間からボールを児玉くんにへとパスした。
「圭、うてっ!」
「っ」
児玉くんは託されたボールを受け取るとキュッと膝を曲げる。