【完】児玉くん色に染められそう。
「…あ」
ボールは回転しながら宙にへと舞った。
―――ピピーッ!
『ゲームセット!』
うちのクラスや友達が一斉に
児玉くんの周りへと集まる。
あたしは未だに
一点を見つめたままでいた。
その先には悔しそうに頭を掻く三宅。
彼は一度もあたしの方向を見ず、そのままゆっくり、水飲み場へと姿を消した。
私の隣にいる結衣は、
「これが勝負ってもんよ」
なんて妙に大人びたことを言って
あたしの背中をポンと優しく押す。
「えっ」
「ほら、早く行きな」
「や、い、今はいいよっ!
児玉くんすっごい女子に囲まれてるし」
「だからこそでしょ!」
えええー。
困惑した表情でやり取りをしていると、ふいに児玉くんと目が合う。
「っ」
児玉くんは二の腕で汗を拭うと、女子の群れを押しのけ、こちらへつま先を向けた。