【完】児玉くん色に染められそう。
彼は火照った顔であたしを注視しながらも、確実に距離を縮める。
後ろにへと後退していた足は
いつの間にか止まっていた。
あたしも、戸惑いがちに
児玉くんを見つめる。
「森さん」
「、」
あたしの苗字を呼んだ瞬間
周りの女子から小さな歓声が漏れる。
視線が、泳いで仕方がない。
児玉くんも周りの熱い視線を
やりづらそうな顔であしらった。
「…俺、三宅に勝ったよ」
「う、うん」
勝ったなんて言う割にその声色は落ち着き払っていたのであたしは更に戸惑う。
前髪の隙間から覗く瞳と目が合う。
心臓が、大きく揺れた。
「だから、いいよね。
俺もう我慢しないよ」
「、」
ゴクリ、と生唾を呑み込む児玉くん。
周りが一挙一動見守る。
彼は分かりやすいほど顔を赤らめさせ、そして意を決したように口を開いた。
「森さんがスキです」
―――わああああ!!
黄色い歓声は、児玉くんの口から発された言葉の直後だった。