【完】児玉くん色に染められそう。
顔に影が落ちる。その影を落としているのは紛れもない児玉くんで。
鼓動が、うるさい。
「…口説くよ。だって俺のこと意識して欲しいから」
児玉くんはあたしの耳元に口を持っていくと、とても余裕のない声でそう呟いた。
耳と胸がは痒くて仕方がない。
「…っ、う、そだ」
逃れたい一心で、出た言葉はあまりにもか細くて。なにこれこんなの知らない。
これ以上はあたしがもたないよ。
児玉くんの腕に手をかけ
押そうとしたときだった。
「ごめん……
一回軌道修正させて」
彼は唐突にそう言って
スッとあたしから離れた。
児玉くんの香りがふんわり舞う。
掌で口許を隠す児玉くんは
紅い顔を心底恥ずかしがりながら
あたしから日誌を取り上げた。
…あたしは一体どうすればいいの。
「三宅の返事、
受けるなら一週間待って」
「へ」
「一週間だけでいいから」
「あ、…うん」
「うん。じゃあ」
児玉くんは、そう言って
一人先に教室を後にした。
取り残されたあたしに残ったのはモヤモヤモヤっとした複雑な気持ちだけ。