Last Story
知らぬ間に見てしまっていたなんて正当な理由言えるわけがない。
言葉を濁すあたしに男の人は少し笑ってさらに話しかけてきた。
「鼻、真っ赤(笑)。てか俺も鼻真っ赤だよ。きっと」
「あ、ホントだ・・・(笑)」
「さすがに今日の気温は低すぎるね。
ホント寒い」
白くはっきり写る吐息は、リアルに
寒さを表現している。
男の人はポケットに手を突っ込んで
また地面を見始めた。
「てか俺、君知ってるよ。
坂井さんでしょ」
「え、何であたしの名前知ってるんですか?」
「そりゃ、同じ学校で同じ学年だからね」
「えっ!そうなの?!」
こんな男の人
見たことがない。
いや、ただ単に
知らないだけかもしれない。
だってあたし、同じクラスになった子しか
名前覚えないタイプだし。
だとすれば、この人は完全に違うクラスだ。
「まあ、驚くのも無理ないよ
あんまり学校行ってないし」
「どうして学校行ってないの?」
「んー、諸事情ってヤツ。
でも来年の春からはちゃんと行く予定」