太陽が昇らない街
「いいんですよ、お礼も言えないような人間にはなりたくない」
笑顔の絶えない男のようだ。
普段なら顔を見て血相を変えて逃げられる。
しかし、彼は違った。
「噂以上に綺麗だね、君は」
警戒心のない顔をしている。
「そんなこと言っても何も出ない。それとも油断させようとしているのか?」
少し拍子抜け、というような顔をする彼女。
「まあそう思われても仕方ないかな。君の周りには敵しかいなかったんだから」
肯定とも否定ともとれない返事をする。
「今すぐ信じてなんて言わない。僕は、君を守りたいんだ」
彼女をまっすぐに捉える瞳。
しかし、彼女の答えは一つ。
「信じない。早く帰って」