太陽が昇らない街
男は彼女の腕を強く引っ張った。
しかし彼女は動こうとしない。
「どうしたの?」
男は彼女の方を覗き込む。
「それは許されない。そもそもこの街から出ることは大罪だ」
彼女に近づけた気がしていた。
もしかしたら、逃げてくれるかもしれないとさえ思った。
どうしてそんな簡単に逃げてくれると思ったのだろう。
「あんたは罪を犯さなくていい。汚れるのは私だけでいいんだ」
彼女の心は、まだまだ解ける気配がないのに。
「それに私は、ここで街人に殺されるのを待っている」
私が消えればこの街に太陽が昇るかもしれない。
原因不明の病気も、治るかもしれない。
だから私はここにいる。