【短編】アナタとワタシ
私は今の状態に意味が分からずに、目をぱちくりさせていた。
これは、私が先輩に押し倒されてるってことでいいんだよね?
でも、なんで!?
首を捻っていると先輩の瞳が好戦的に変わった。
「可愛いな、反応が」
「あの……先輩?なんのことですか」
分からずに聞くと、先輩は笑い出した。
それも、大笑い。クールイケメンが大笑いなんて……。
めったに見られないから、逆にラッキーかも。
先輩は私の耳元へ唇を近づけた。
耳朶に息がかかってドキッとする。
「“キス”のことだよ」
……キス。
キスか。そっか。
って、そんなのですませられる訳ない!
なんで私なんかにキスを……?
私、こういうチャラい人大嫌い。
だから、勇気を振り絞ってこう言ってやる。
「なんで……キスなんかしたんですか」
……弱々しく震えた声になってしまった。
ああ、神様。私はどうして気が弱いんでしょうか。
ギュッと目を瞑ると、また唇に温かいものが触れる。
今度は抵抗した。……でも、今回のキスは甘くて優しい味がしたんだ。