【短編】アナタとワタシ
でも、嫌なものは嫌。
かといって先輩を突き飛ばす力も度胸もない。
仕方なく、おとなしくする事にした。
数秒経ってやっと唇が離れる。
苦しかった。私は肩を上下に揺らし、息を肺に取り込んだ。
「何でキスするか……?そんなのお前が好きだからに決まってんだろ」
何を言っているのか、最初は分からなかった。
次に、聞き間違いだと思った。
でも、先輩の瞳は本気だったんだ。
……正直嫌いなタイプだけど、ドキドキしたのも事実。
私は唇に指を当て、俯いて下唇を噛み締めた。
「嘘……ですよね」
肩を掴まれ、乱暴に起こされた。
肩が痛い。先輩、力が強すぎるよ。
「俺を疑ったな?お仕置きだ」
いきなり獣のように変化した。
男の人って、こんな風になるんだ。
そう思ったと同時に、怖いとも思った。
元からSっぽいけど、さらにドSになったから。