襲撃プロポーズ-二度目の求婚-
しかしそんな彼女が今、自分の声を聞こえないものとし背中を向けている。
顔さえ見せてくれない。
それだけで晴宗を落ち込ませるには十分な出来事なのだ。
「えくぼ」
今、自分はどんな顔をしているのだろう。
情けない顔をしているのだろうか。
彼女の名前を呼びながら、晴宗は心の中で苦笑した。
そして同時に改めて自覚する。
それほどまでにこの一人の女に惹かれているのだということを。
この女に嫌われたくはないのだということを。
部屋に響いた晴宗の見た目に似合わない弱々しい声に、ピクリと僅かに久保姫が肩を揺らした。