襲撃プロポーズ-二度目の求婚-
「えくぼ」
優しく彼女の名前を呼んで。
晴宗はもう一度彼女と視線を重ねる。
決して彼女を逃がしてしまわぬように。
「俺の寵愛は、一生全てお前のものだ」
それは飛び立つ美しい蝶を捕まえる蜘蛛の糸にも似た言葉。
その言葉に大きく見開かれた久保姫の瞳。
そしてじわりじわりとその黒い宝石が歪んでいく。
晴宗は気付いていたのだ。久保姫が感じている不安に。
そんなことはないと晴宗なりに毎日伝えているつもりだったが、それだけでは不安なのが女心なのだろう。
(だが、侮ってもらっては困る)
晴宗の想いはそんなに易いものではないのだから。