襲撃プロポーズ-二度目の求婚-
晴宗を呼ぶ鈴が鳴ったような可愛らしい声もありはしない。
ただただ凍てつくような冷たく重い雰囲気だけが部屋の中に充満していた。
そんな肌を刺すような空気に、晴宗は先程聞いた女中の言葉を思い出す。
"─────実は…久保姫様のご機嫌が好ましくないようで…"
そうどこか怯えたように口を濁した女中。
聞けば部屋から出てこようとしないらしい。
その戸惑いを隠せていない表情に晴宗は確信した。
いつもと違うこの空気を作り出している張本人。
それこそまさしくこの部屋の中にいる愛しい自らの妻だということを。