Sweet kiss
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歩いてた。
先生に言われた用事の帰りに体育館の横の細道を歩いてた。
そのとき…
危ないって声と、何か迫ってくる物体。
あたしは…意識を失った。
目が覚めると、そこは、保健室だった。
「悪かったな。うちの部員が。ほら、翔、謝れ。」
先輩らしき人が、保健室の外にいるらしき人に声を掛ける。
「ぼーっと、歩いてるのが悪い。」
あたしは絶句した。
確かにそうなのだが、他に言い方がある。
「こら、翔。言い方を考えろ。」
「怪我ないなら大丈夫だろ?俺、練習戻りたいんだけど。」
その言葉に、あたしは、頷いた。
「そ、そうだよね。時間とらせてごめんね。古澤くん…。」
あたしは、クラスメートの名を口にした。
初めて、口にした男子のクラスメートの名前。
「別に。」
彼はそう言うと、体育館の方へと走って行った。
「あんなこと言ってるけど、本当はすげー心配してたんだ。ここまで運んできたのも、翔だからな。」