不謹慎ラブソング
「雨……痕?」
 
ふと思いついた単語を呟いてみて、ハッとした。

辺りを見渡すと、教科書にマーカーを引いていた生徒たちがこちらをジッと見ていた。
 
「どうしたの? 樋口さん。」
 
私の世話を担任から命じられている委員長に訊ねられ、私は慌てて首を横に振った。

筆箱からマーカーを取り出して、皆と同じページを広げ、授業に取り組んでいるような姿勢をとってみた。
 
それでもクラスメートたちは心配そうに私の方を見ていた。
 
「ねえ、どうして泣いているの?」
 
委員長に訊ねられ、私は慌てて自分の頬に触れてみた。

涙が零れ落ちるところだった。
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