不謹慎ラブソング
「礼人君だって、充分優しいじゃん。私なんかに優しくしてくれるし、どんな時でも笑っていてくれるし。折角私に優しく接してくれる人に、怒りたくなんてないよ」
この村に来てからもまだ、我慢している気でいた。
疎外されているつもりだった。
でも、本当はもう、私の心を荒立たせるものなんて何一つなかったのだ。
とても、恵まれた環境にいられた。
遠慮がちに抱きしめられ、ようやく自分が幸せだったということに気付かされた。
「これから、ずっと一緒にいたら、杏里のこと怒らせるかもしれないよ、俺」
「その時は、礼人君が私の機嫌直してくれるんでしょ……」
相変わらず可愛げのない私の答えに、礼人君は声をたてて笑い、それから一層強く、私の身体を抱きしめてくれた。