たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
そう呟きながらも、惟は千影に『コーヒーもう一つ』と告げる。もっとも、その声に被さるように別の声が響いてきていた。
「山県様、お気遣いは不要です。少々、気になることがありましたのでお邪魔させていただいただけですので」
「客って竹原だったの? 珍しいね。亜紀のことで何かあったの?」
柔らかな笑みを浮かべたまま、惟がそう問いかけている。もっとも、それも当然だろう。なにしろ、相手の雅弥は一條家の執事であり亜紀の世話役でもあるのだから。
一方、声をかけられた方は静かに腰を折ると、その場にいた千影に鋭い視線を送っている。これは、先ほどラ・メールで遭遇した相手だ。そのことに気がついた千影は膝がガクガクなりそうなのを必死で隠していた。そんな彼女の様子に、惟が不思議そうな声を上げる。
「南原、どうかした? 顔色が悪いようだけど」
「い、いえ……何でもありません……それより、本当にご用意しなくてもよろしいのですか?」
「いいよ。彼って結構、頑固でね。ま、今の格好でのんびりコーヒーを飲もうとは思ってもいないだろう。時間もないんでしょう? 用件、きかせてもらえるかな?」
惟の声に、雅弥はどう話を切り出そうか、というような表情。そんな彼の視線が、千影の方へと向けられる。その視線に思わず息を飲んだ彼女の姿は、先ほどのものが嘘のようにもみえる。
その理由を察したのだろう。彼は誰にも気づかれないようにため息をつくと、鋭い視線を千影に向けている。その視線の厳しさに一層彼女の顔色が悪くなっていく。もっとも、そんなことを雅弥が気にするはずがない。彼は淡々とした調子で、惟に来訪の目的を告げている。
「山県様、お気遣いは不要です。少々、気になることがありましたのでお邪魔させていただいただけですので」
「客って竹原だったの? 珍しいね。亜紀のことで何かあったの?」
柔らかな笑みを浮かべたまま、惟がそう問いかけている。もっとも、それも当然だろう。なにしろ、相手の雅弥は一條家の執事であり亜紀の世話役でもあるのだから。
一方、声をかけられた方は静かに腰を折ると、その場にいた千影に鋭い視線を送っている。これは、先ほどラ・メールで遭遇した相手だ。そのことに気がついた千影は膝がガクガクなりそうなのを必死で隠していた。そんな彼女の様子に、惟が不思議そうな声を上げる。
「南原、どうかした? 顔色が悪いようだけど」
「い、いえ……何でもありません……それより、本当にご用意しなくてもよろしいのですか?」
「いいよ。彼って結構、頑固でね。ま、今の格好でのんびりコーヒーを飲もうとは思ってもいないだろう。時間もないんでしょう? 用件、きかせてもらえるかな?」
惟の声に、雅弥はどう話を切り出そうか、というような表情。そんな彼の視線が、千影の方へと向けられる。その視線に思わず息を飲んだ彼女の姿は、先ほどのものが嘘のようにもみえる。
その理由を察したのだろう。彼は誰にも気づかれないようにため息をつくと、鋭い視線を千影に向けている。その視線の厳しさに一層彼女の顔色が悪くなっていく。もっとも、そんなことを雅弥が気にするはずがない。彼は淡々とした調子で、惟に来訪の目的を告げている。