たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
「お嬢様から伺いました。しかし、お嬢様がこちらに出入りなさるのは、少々問題があるのではございませんか?」


「どうして?」


「たしかにこちらには山県様がいらっしゃいます。そして、そうである以上、セキュリティーがしっかりしていることも承知しております。しかし、気がかりが一つございます」



そう言いながら、雅弥はもう一度千影の方を向く。どこか冷たい彼の視線に彼女の背筋が凍りつくようになっていく。

どうして、初対面ともいえる相手にこのように睨まれないといけないのか。

そのことを不思議に思う千影だが、疑問の声が出ることはない。その彼女の声を代弁するかのように、惟が口を開く。



「ねえ、竹原。何を気にしているの? ここは僕の領土ともいえる場所だ。君も気がついているように、セキュリティーには細心の注意を払っている。亜紀がここに出入りすることで、押し寄せる連中はいるだろう。だが、無茶はしないはずだ。そのことも分からないの?」


「そのことは十二分に承知しております。山県が一條のIT関連を担っている以上、そのお言葉を疑うはずがございません。私が懸念しておりますのは、それ以外の事柄です」



そう言いながら千影をみる雅弥の視線。それは先ほどまでとは違い、完全に彼女に敵意を向けている。そして、そんな視線を向けたまま、雅弥の言葉は続いていく。



「僭越とは存じております。それでもです。先ほど、こちらの女性とお嬢様がトラブルになりました。そのような方の居る場所に、お嬢様を出入りさせるわけには参りません」
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