たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
募る、募る恋心
時間は少々、遡る。そう、惟とアンジーが別行動をとることになった原因。亜紀を迎えに行こうと動き始めた惟を千影が引きとめた。ちょうど、その時点。

いつものように恋しい相手に会いに行ける。そう思っていた惟にかけられた千影の声。普段ならそのようなことをする彼女ではない。だというのに、どうして今日に限って、この時間に声をかけてくるのか。

今の惟の思いは間違いなくそれだろう。そして、いつにもまして彼女がしつこく声をかけてくる。このままでは亜紀を迎えに行く時間に遅れてしまう。そう思った惟は、アンジーが『迎えに行こうか』と言ってくれたことに安心したように頷いていた。

もっとも、この行動を後から彼は思いっきり悔やむことになるのだが、今はそう思ってはいない。これで大丈夫だと安心した惟は、どこか渋い表情を浮かべて、千影に向き直っていた。



「南原、君だけで処理できないような案件があった?」


「は、はい……ご予定がおありだったのに引き留めて、申し訳ありません」


「そう思っているのなら、簡潔にして。僕も用事があるんだよ?」



このところの千影の態度が腑に落ちない。そう思っている惟の声はどこか厳しい。そんな彼の声に体を小さくしながら、千影は言い訳の言葉を口にしていた。



「お手数をおかけして申し訳ありません。でも、やはり惟様の判断を仰いだ方がよろしいかと思いまして」


「そう? 一応、僕としては君のこと信頼しているんだよ。君の裁量に任せて失敗したことはなかったと思ってるし」
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