たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
それが一條家の執事であり、彼女の世話役でもある竹原雅弥。彼が何事もそつなくこなす有能な人物である。そのことは今回の件ではっきりと示されている。なにしろ、惟がどう足掻いても亜紀に会うことができないのだ。

これが一度や二度ならば偶然の巡りあわせと納得することもできるだろう。ところが、あの日以降、彼女との接触が完全に断たれている。声を聞くことどころか、姿を見ることもできない。

このことは、惟の精神状態をかなりナーバスなものにしてしまっている。今の彼は亜紀が不足している状態。このままだといずれ爆発する。そのことは彼自身が一番よく知っている。

だが、その事態を解決できる唯一の存在が完全に彼のことを拒否している。となると、完全にお手上げ状態。そんな中、惟はどうして雅弥が亜紀に同調しているのかと不思議にも思っていた。

たしか、彼は彼女の世話役でもあるはず。ならば、彼女が婚約者である惟を不自然に避け続けることを諌めることができるはず。それなのに、彼女が惟から逃げることを助けるという、まるで逆のことをしている。



「どうして、竹原は亜紀が逃げるのを助けようとする? あの時、連絡するといったのは彼のはずなのに。それなのに、どうして?」



そんな呟きが惟の口からはもれている。なにしろ、彼には今の自体が理解できない状態でもあるからだ。だが、この場に雅弥がいれば間違いなく惟を糾弾しただろう。

なにしろ、彼は惟が亜紀を強引に襲ったと思っている。そのために、亜紀が惟のことを拒絶しているのだという結論にいたっている。そして、彼がそう思う以上、亜紀が惟から逃げることに協力するのは当然ともいえるだろう。
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