たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
もっとも、これは完全な勘違いであるのだが、そのことを雅弥は知っていない。だからこそ、彼は全力を挙げて惟が亜紀と会うことのないようにと動いている。

おかげでこの一週間、惟は最愛の女性でもある亜紀の不足を補えずにいる。だが、それも我慢の限界。これ以上、彼女が不足するようなことがあれば、危ない道に走ってしまう。そう思うからこそ、惟はいつもとは別の番号にダイヤルしているといれるのだった。


そして——


翌日の午後、惟は白綾学園の理事長室に姿をみせていた。そう、亜紀が雅弥と共同戦線を張って惟を避ける以上、彼が取れる道は一つだけ。亜紀の兄である拓実を通じて、彼女の状況を知るしかないと思ったのだ。

そんなことを思う惟の表情は普段とは違っているのだろう。そして、それを敏感に察している拓実はどこか呆れたような声を出すことしかできなかった。



「惟さん。急に電話してくるから驚きましたよ。何かあったんですか?」


「あったっていうか、なかったというか……それより、亜紀は元気にしてるの?」


「それ、惟さんがきくんですか? 亜紀ちゃんのこと、独占しているくせに」



拓実の声に、惟は表情を強張らせている。たしかに、拓実が言うように亜紀を独占していたのは間違いない。だが、それはこの間までの話。

この一週間、完全に拒否されている彼にとって、今の言葉は嫌味でしかない。そんな抗議の色を浮かべた目で彼は拓実を睨んでいる。その姿に、拓実はため息をついて応えるだけ。



「亜紀ちゃんなら元気ですよ。って言いたいんですがね。ちょっと違うかな?」
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